いざ、魔王城へ その8
「ありがとうございます母様」
シルフちゃんの身支度の手伝いが終わって、いよいよ最終決戦である王座の間だ。
今は私が用意した服ではなく、シルフちゃん専用の装備を身につけている。
ヴァンパイア族の専用装備。
それは自らの血液を編みこみ、特別な術式で仕立てる。
性能の向上はもちろんだが、彼らが手間暇かけて仕立て上げる理由。それは、先程の霧化や他の形態に変化した時に、装備品ごと変身出来るのだ。つまり、脱衣しなくてもよくなる。
革製のブーツに、キュロットパンツスタイル。後ろが長いテールコートがスタイリッシュだ。カラーは全身が黒で統一されている。可愛かったイメージが一新され、今はクールビューティー。
「それにしても、すごいねシルフちゃん。一人であの獣人を仕止めるなんて」
「あれは催眠の効果を付与して強制的に眠らせたんです。おそらく一日くらいは眠ったままですよ」
一日眠っていてくれれば全てのカタがつく。
「ありがと。助かるよシルフちゃん。それに、その装備とても似合ってるよ」
「ありがとうございます。でも母様からいただいた服も気にいってます。お休みの日は着ますね」
うう……なんていい子なのだろう。
本当の親じゃないけど親バカになりそうだ。
さてと。この階段を上がった扉の先にボスが待っているはず。とりあえずは蒼の剣を助けないと。
「それじゃあシルフちゃん。ここの階段で座って待っててくれるかな?ちゃっちゃと終わらせてくるから」
「はい。でも、何かあったら呼んでください。すぐにかけつけますから」
「ありがと。私、これでも元魔王様だからね。少しはいいところ見せないとね。デスサイズさんとガブリエルが来たら状況を教えてあげて」
「はい。お気をつけて。ご武運を」
少女の髪を撫でる。
今は切られてしまって短いけど、元の長さのシルフちゃんも見てみたい。
美人さんだからロングも似合うに違いない。
「じゃ、いってくるネ!」