いざ、魔王城へ その4
「そりゃそうよね普通。シルフちゃん下がっていて」
目の前に一人の男が立ちはだかる。
通路を進んだ先にある玉座の間に続く大階段手前の吹き抜けの空間。
ラスボス手前には、最後の強敵が立ちはだかるお約束。
人間界のゲームで予習済みだ。
「ふふふっ。あなたがいる事は予想していたわよ。おとなしく、そこをどくか。それとも私と一戦交えるかしら」
「悪いが......ここを通すわけにはいかない......どういう理由でアイツの姿を真似ているのかは知らないが。ここで討ち取らせてもらう」
「あら?あなたって......ちゃんと意思があるのね。下の人たちとは違うみたい。それなのに、あの偽物の言いなりになるなんて......ああ、そうか。大切な人が人質とかになっているのかしら」
「偽物?お前が偽物なのだろう?それに妹の事を知っているのか!?弱味を握って従わすというのが残虐女王のやり口と聞いた」
当てずっぽで言ってみたが、まさかの正解らしい。
「私が正真正銘のフレデリカよ。っていうか、人質とかやらないし。どういうイメージだ私」
「...........どちらが本物かは分からないが。いづれにせよ、お前を殺らなければ妹の命が窮地のままだ。それと最後に言っておく。お前が正しくとも、今は説得は無駄だ。いくぞ!」
男の筋肉が膨れ上がり、四つ足の獣へ変貌が始まる。
体格は倍以上に発達し、上顎から突き出た二本の巨大なサーベル状の牙が、私という獲物を狙っている。
これは……タイガー。肉を喰らう獰猛な獣。
「ねぇ。ちゃんと話をしましょう。あなたの大切な人は私が助けるから。だから力を貸して一緒に」
「だから無駄だと言った!」
上から覆い被さる様に迫る巨体に視界が塞がれる。
間近で見ると、圧迫感でより巨大に感じる。
このままカウンターで仕止めてしまうのは簡単だが、なるべく殺したくない。
「タマヨリ流奥義…… 反動裂波猛襲撃!」