魔王城へ 作戦会議 その1
「……というわけで、これからの事なんだけど」
大きめの円卓に、中華料理がフルで並んでいる。
もちろん円卓はクルクル回るターンテーブルが付いているやつだ。
言うまでもないが、テーブルも料理も全部人間界から持ち込んだものである。
撤退してきた私たちは、城に潜入する為の作戦を立てることにした。
城の中に転移しても、先程の様に兵が配備されていたらマズイ事になる。
城内の狭い場所だと物量で押し切られる可能性が高い。
私だけなら何とかなるけど、シルフちゃんと中遠距離のガブリエルを守りきれない。
蒼の剣がいれば、城の中の状況も確認出来るんだけど。
私の力不足だ。あの子がいないと何もできない。
「すみませんフレデリカ様。会議の前に一つでけよろしいでしょうか?」
デスサイズさんが手を上げる。
身に付けている深いスリットの入ったドレスが、中華料理にドンピシャでマッチしている。
「はい、デスサイズ君。発言をどうぞ。っていうか、この中でデスサイズさんが一番の権力者なんだから私とかに気を使わなくていいのよ」」
「いえ。私はフレデリカ様に対し忠義を持っているので。ですのでフレデリカ様も私に気を使わなくても大丈夫です」
「うーん……わかったけど。でも公の場とかは、デスサイズさんの方が上だからね。私は丁寧な言葉で話すから。デスサイズさんも私の事を部下だと考えて接してね」
「い、いえ。そんな事……」
「いいの。魔王様が下っ端に敬語とかで話していたら変でしょ?それで?聞きたい事って何?」
「は、はい。それで聞きたい事というよりもお願いでして」
んっ?急にモジモジし始めた?
よくわからないけど、下を向いて顔を赤らめている……気がするけど。彼女のこんな顔。初めて見るかもしれない。
「あのですね。フレデリカ様は落ちぶれ天使の事を『ガブリエル』ってフレンドリーに名前を呼ぶじゃないですか?」
「えっ?あぁ確かに。そうかもしれないかな」
確かにデスサイズさんの言う通りだけど。でも、別にフレンドリーというわけではない。
「で、それで……別に羨ましいというわけではなく……いえ、ちょっとだけ……いいな、って思うわけです」
「えっ?うん。そうなんだ」
「だから……私の事も同じ様な感じで呼んでいただけたら非常に嬉しく思いまして……」
「わかったわよ。こんな感じ?デスサイズ」
「はっ…………うぅ」
デスサイズさんの赤みを帯びていた顔が更に赤くなる。
「あら可愛い。でも私からもお願いがあるんだけどなぁ」
「な、なんでしょう?」
「私のことも『様』なしで呼んで。そうすれば私たち、もっと仲良くできると思うの」
「そんな。それでは私とフレデリカ様が対等な立場に……」
「いいじゃない対等で。でしょ?」
「はい。では……フレデリカ……これからもよろしくお願いします」
「うん!喜んで!こちらこそよろしく!」