ヴァンパイア その4
シルフちゃんの住処であった屋敷は完全に無傷で残っていた。
何なら、そのまま引き続き住めるのではないかと思えるほど損傷もなく美しい建造物だ。
しかし、裏切り者のレッテルを貼り付けられた彼女は、もうここには居られない。
必要な荷をまとめ、知らない土地へと移らなければならない。
一枚の扉を開くと、そのまま地下に続く階段が姿を現した。
「こちらです母様。ここがアイテム貯蔵庫です。全てのストックの保管場所。ここにはもう、これを必要とする者はいません。お好きなだけお持ちください」
螺旋となった階段をゆっくりと降りていく。
地下室独特のヒヤリとした空気が心地いい。
地下倉庫という響きから、カビ臭い地下室を想像していたが、掃除も行き届いている。
石畳の床には赤い絨毯が敷かれていた。
壁伝いには整理棚が設置されており、大量の小瓶が規則正しく並べられている。
おそらく数百本はあるだろう。
パッと見でも四種類のポーションがあるのが確認できる。
ただし、瓶の中にある液体の色が、私の知っているものと違うのだけれども。
これって、種族が違う私が飲んでも大丈夫なのだろうか。
蒼の剣がいてくれたら鑑定識別の能力で判別してくれるのだろうけど。
一か八かで飲むのも怖いしなぁ。
とりあえず、全部回収させてもらおう。
置いていっても朽ちていくだけだろうし。
これだけの量を腐らせるのは、さすがに忍びない。
無限空間という収納場所があるから、いくらでも保管はきく。
問題は大量のアイテムを回収するのには、それなりの時間が必要となる。
「シルフちゃん。この作業って、ちょっと時間かかりそうかも。もしかしたら今日は、ここに泊めさせてもらうかもだけど大丈夫かな?」
「はい!もちろんです」
「ありがと。それじゃあ申し訳ないけど、他の二人にも伝えてきてもらえるかな。私は、ここにあるやつを今日中に片付けちゃうから。よろしくネ!」