新しいパーティー その2
治療が終わってから二週間。
私たちは、この海底洞窟に潜伏した。
ここから出るのは全員が万全の状態になってからの方が望ましい。
食料や水は、人間界から持ってきたものが無限空間に保管してある。あの空間の中は時間という概念がないらしく、食料なども腐る事はない。だから調理された『料理』の状態でも保管ができる。
だから栄養補給は問題なくできる。
ヴァンパイアのシルフちゃんは普通の食べ物は食べれない。
何を食べても土と同じ味がするそうだ。
でも、力を大量に使わせてしまったからエネルギー供給は必要だ。
ヴァンパイアにとっての食糧といえば生血。
「遠慮しなくていいよ。私の血を吸って。指からでいいかな?」
人差し指をシルフちゃんの前に差し出す。
「あの……出来たら心臓に近い場所の血をいただきたいです。その方が美味しいから……できたら首すじの血を……」
そういえば。人間界にあった空想の吸血鬼も、だいたい首に噛みついていた。あれって、あながち間違いではないみたいだ。
「大丈夫だよ。さぁ、おいで」
両手を広げてシルフを抱きよせる。
彼女は対面で抱き合うように顔を寄せ、そして私の首に牙を突き立てた。
コキュ、コキュ……
耳元で、私の血がシルフちゃんの喉を下っていく音を聞きながら、これからの事を考える。
私が最優先にやらなければいけない事。
それは大切な相棒を迎えに行く事だ。
あの子は無事に逃げ切れただろうか。
蒼の剣も大気中にある魔素を吸収して魔力の補充が可能になったと言っていた。だから魔力切れで行動不能になる事はない。
しかし、それでいて私の元に戻って来ていないと言う事は、あの残虐女王に捕えられて動けない状況に陥っている可能性が高い。
そうであるなら…………あれ?なんか……ぼぉーってしてきた。そうか。急激に血を抜いているから……
「シルフちゃん……そろそろ私……ごめん……また明日にあげるから…………」
クラクラと目が回る感覚の中で、私の意識は闇へと落ちていった。