傷つきしヴァンパイア その2
あっ、いたいた。あれね。なんか服装がボロボロだけど大丈夫かしら。負傷もしているみたいだし、厄介ごとに巻き込まれなければいいけど。
念のため気配を消す。
逃走された場合でも捕まえられる距離にまで接近する為だ。
(万が一逃走を計られたらサポートお願いね)
私の意図を理解してくれたのか、青く輝く相棒は上空に上がっていく。
「ねぇ。そこのあなた。聞きたいことがあるのだけれど。ちょっとだけいいかな?」
驚かせない様に、三メートルほど距離をおいて声をかけた。
「…………ひぃい‼︎」
えっ?何?その反応?
その恐怖で怯えた表情はなんなの?
明らかに私の顔を見て反応した。
それと、短い髪から性別は男性だと思っていたけれど声が女性だ。
注意深く見ると、短い髪は力任せに引き千切られた痕跡がある。これって普通じゃない気がする。
これは……嫌な予感しかしないのだけれど。
「も、もう許してください!家族の生命で許してくださいぃ!もうやめて!やめてくださいぃぃ!」
理由はわからないが、女性ヴァンパイアはパニックに陥っている。
「ちょっと落ち着いて。私は何もしないから。ねぇ?怪我してるみたいだし治療しよ。ねっ?」
理由はわからないがパニックになっている。
「嫌ぁ!近づかないでぇ!許してくださぁい!もう許してぇ!」
特徴的な紅い瞳から涙が止まる事なく溢れている。
私って有名人かもしれないけど、そんなに恐怖の象徴的な存在はないけど。
「ちょっと待って。治療してあげるって言ってるの。だから少し落ち着いて。ねっ?」
「こっ、こないでよー!お願いします!お願いします!腕とか足切るのやめてくださいー!」
「何言ってるの?ねっ?私のこと知ってる?二年前くらいに……」
「こないでー!殺戮女王フレデリカーァァ!」
「なっ、殺戮女王⁉︎」
初めて聞く自分の異名だ。
あまりに物騒な二つ名に、ちょっとだけ動揺してしまった。
もちろんだが、この名称に心当たりはない。
「いやぁぁぁ!いやぁ!いやっ!」
だめだ。パニックで話は出来そうもない。
ここは……
「蒼の剣!この子眠らせるから手伝って!」
と言っても、私が睡眠魔法を使うわけではないけど。
私がやるとしたら……殴って気絶させる事になる。
んー、少しは色々習得した方がいいかもしれない。
これじゃあ『脳筋』とか言われてしまう。