帰還……その2
「じゃ、またね。フレデリカさん。元気でね。例の件よろしくね」
「はい。分かりました。きっちりは約束できませんが覚えておきます」
(マスター。魔力不足の為、維持がそろそろ限界です。急いでください。この次元の口が閉じると、また二年待たないといけなくなります)
うわっマズイマズイ!
「それじゃあ真琴さん!さよなら!真琴さんも元気でー!」
慌てて黒い霧に飛び込む。
走馬灯じゃないけど、二年間の思い出が脳裏に甦る。
振り返ると、楽しい思い出しか出てこない。
運がよかったのかもしれないけど、少なくとも私は幸せだった。
もう向こうの人の世界には、進んで行こうとは思わないけど、水道真琴に頼まれた事があった。最後に言っていた『例の件』って言うのがそれだ。
『例の件』
年に一日だけでいいから、人の世界に来てほしいと言っていた。
女坂探偵事務所では、人の力だけでは解決出来ない。どうにもできない案件を年に何件か発生し抱える事になる。
私の力を使えば、それらを解決できる。救われる人や助かる命があるのだ。
私も、それはいい事だと思う。
でも私は、人の世界にいてはいけない存在。邪悪な存在。
そんな私が手を貸してもいいのか。
今の私にはわからない。
だから約束は出来なかった。
「蒼の剣。あとで相談にのってほしい事があるの。いいかな?」
ペンダントから剣に戻った相棒に声をかける。
「承知しました。最良の道へのお手伝いをさせていただきます」
ほんと頼もしい。
この子なら正しい選択を出して、一番いい方向に導いてくれる気がする。
「お願いね。頼りにしてるよ」
足の裏に地面の感覚が戻ってきた。
カラカラの土の感触だ。
意外にも、こんな世界を懐かしく思う。
そういえば、私は人の世界よりも魔界にいる時間の方が長い。ほとんど故郷みたいなものだ。
懐かしく思うのも当然かもしれない。
「さて。現在の支配者は誰なのかな。やっぱりデスサイズさんが有力よね。そうだったら昔のよしみで雇ってもらおうかしら。こっちに戻ってくるのに魔力使っちゃったから、またスッカラカンなのよね。無茶は出来ないから気を付けないといけないわね」
「その通りです。今の状況で強敵に会敵すると非常に危険な状況になります」
「了解。それじゃあ、そこの岩場で一日ほど休憩しよっ?で、マジックポーション手に入れて完全回復だね」