初陣
当然、私のお願いが聞き入れられる事もなく、予定通り合流ポイントへと到着した。
かなり本格的に支配領域を拡大させる出征だったらしく、それだけに被害も甚大なものとなってしまったようだ。
具体的な損害を調べると人も兵器も相当の数を失った。
魔法戦車と特級タンクを三十組。
歩兵兵士約五百人。
騎馬二百頭。
魔法アイテム四百以上。
魔法戦車と特級タンクは早急な補充はきかない。
兵士も私が所属している基地の人員の約六分の1を一度に失った事になる。
国全体で見ても被害は甚大だ。
この状態でカウンター侵攻されたらマズイ事になるのではないだろうか。
「王子殿下。ご無事で何よりです。時間に余裕がない故、ご無礼お許しください」
ホークが最低限の会釈で挨拶をすます。
王子も負傷したのか右手に布を巻かれていた。
「これより我々は敵の聖騎士を迎えうちますので、王子殿下は王都にお急ぎください」
「すまない軍事司令。私のせいでたくさんの兵を死なせてしまった。私もこの巨大な戦車で戦いたい。足手まといにはならぬ。共に戦わせてもらえないか。死んでいった兵の仇をとらねば父にあわせる顔がない」
「恐れながら申し上げます。あの超弩級機械式魔法戦車は、相当な時間の鍛錬を積まないと、ただ走るだけでも儘なりません。私も一ヶ月以上の時間をかけて、やっといまのレベルまで動かせるようになりました。それに二人しか搭乗できない様設計されていますゆえ」
たしか第一王子は私と同じ十八歳だ。
それなのにこの王子には威厳を感じる。これが血統というものなのだろうか。
この王子は、きっといい王様になれる気がする。
「申し訳ございません。これは陛下の意思でございます。王都までお戻りください。敵は私とこのフレデリカで蹴散らします。後ほど王都にご報告にまいります。大丈夫です。我々は絶対に負けませんよ。では」
深々と頭を下げ、この場をあとにする。
私も王子殿下に会釈をし、慌ててホークを追いかける。
「『絶対負けません』なんて大きな事言ったわね。いい報告が出来ればいいわねホーク司令」
少しだけ茶化すように顔を覗き込む。
「まぁ、すべては俺たち次第だけどな」
めずらしくホークが緊張している。あの聖騎士が相手じゃ無理もない。私なんて正直言って逃げ出したい。何せ、二回も殺されかけている。
「大丈夫だよフレデリカ。君は絶対に死なせないから。必ず生きて帰すから。俺の事信じてほしい。俺は君に……」
何⁉︎『俺は君に』なんなの?
そんな事言われたら頑張って吹っ切れたのに、また好きになっちゃうじゃない。
「さぁ、行こうフレデリカ」
「う、うん」
いまだかつてない緊張感が私達を包んでいた。