あたたかい世界 その4
「そうよぉ。私は薬師くんが好きよぉ。悪いかしらぁ?あっ!ダメよぉ。フレデリカは薬師くんの事好きになっちゃ」
うわぁ。何この人。酔うと可愛いじゃないか。
これは噂で聞く『ツンデレ』ってやつでは。
よおし。頭をナデナデしてあげよう。
「大丈夫ですよ真琴さぁん。私は誰も好きになったりはしませんから。いいですねぇ。真琴さんも凛ちゃんも。恋をしてるとキラキラのオーラがでちゃうんですね。ウラマヤシイです」
「あら?凛ちゃんの事気付いたの?あなたすごいわねぇ。本人さえ気づいていないと思うのに」
真琴さんがキョトンとした顔をしている。こんな顔も初めて見る。なんか今日は豊作だぁ。
「まぁ、凛は昔の記憶がないからね。あの子訳あって記憶を失っちゃったのよ。それでも心の奥に秘めていた気持ちは生き続けてるのね。愛って素晴らしいわぁ」
水道真琴がグラスに入っている何かの液体を一気にあおる。何を飲んでいたのか私も記憶がない。私のグラスにも同じものが入っているというのに。私も大概だな。
毒ではないのは確かだし。私も真似をしてグラスをあおる。
「みんな幸せそうでいいですねぇ。私も幸せを感じてみたい……まぁ……今現在はちょっと楽しくて感じていますけど。来月くらいには魔界に帰らないといけないからなぁ。帰ってもこんなワイワイキャピキャピする人いないしなぁ。はぁ」
「あら。ずっとこっちにいればいいじゃない?あと迷信だけど、ため息は幸せが逃げるわよ」
「そうも言ってられんのですよぉ。なんて言うのか……分かりやすく言うと部下?家来?家臣?みたいな人を残してきちゃってるんですよ。もう二年くらい経っちゃってるからなぁー。もう私なんて必要ないでしょうけどねー。ぷはぁー」
おかわりした謎の液体を一気に飲み干す。
「あらぁ。フレデリカちゃんも、なかなかの飲みっぷりねぇ。私も負けてられんわよ。マスターおかわりなのよ!」
「真琴さん。語尾が巫女さんくらい変になってますよ」
「でもさぁ。フレデリカちゃんが、残してきた部下ってやつ?その人たちの事が心配って事は、フレデリカちゃんにとって……ぷはぁ。その人たちって大切で好きな存在って事じゃないの?」
うーむ。どうなのかな。あまり気にした事なかったからなぁ。どうして気にしてるのだろう。
例えば……
あの三人が私の留守中に何者かの襲撃で命を落としてしまったとする。
その時に私はどうする?
きっと襲撃者に報復をする。
なぜ?
プライドを傷付けられたから?
違う……私は……あの人たちの事を……。
「どうしたフレデリカちゃん?今日は呆けている回数が多いのだね。私のアドバイスが効いたのかな?それなら褒美に私の頭を撫ででくれてもいいのよ。さっきみたいにね」
「はいはい。真琴さんのおかげで何かが見えた気がします。ありがとうございましたー。はい、いい子いい子」




