帰還できず その1
「えっ?嘘でしょ?」
最近このフレーズをよく口にする。
それだけ想定外だらけな日常を送っているという事だろう。
「嘘ではございません。魔力残量不足の為、魔界への道が作れません」
そろそろ自分の世界に戻ろうと、蒼の剣に相談したところ、まさかの答えが帰ってきた。
ちなみに蒼の剣は、小さくなってペンダントとして私の胸元を飾り付けてくれている。見た目はそのままだ。
もともと見た目が宝石みたいだから全くと言っていいほど違和感はない。
それにしても……
『帰れない』
予想外の回答に少しだけ心が乱れる。
「魔力不足は自分でもわかっているよ。で、よく分からないのだけど。あれから一週間経つけど全然魔力が回復しないの。折れた右腕も回復できないし。どういうことなの?」
「はい。こちらの世界には空間中に含まれる『魔素』の量が低くなっています。魔素は魔法に関する全ての源となるもの。よって、消費した魔力の回復にも、それなりの時間が必要になります。ちなみに、この世界の魔法技術の衰退は魔素の減少によるものかと思われます」
この説明で充分だ。
私の体感している一週間の魔力回復具合と、蒼の剣が説明してくれた内容を掛け合わせる事で答えが出た。
「……それってマズイわよね?ねぇ蒼の剣。魔界へ帰る為に必要な魔力って……どれくらいの日数が必要かしら?」
聞くのは怖いけど、これは必要な情報だ。
「これまでのマスターの魔力回復量と大気中の魔素量の測定します。その数値から必要魔力回復までの時間を割出しを実行します…………算出完了。マスターが完全に魔力の消費をゼロに抑えての条件の必要日数……二年と二十日です」
「ははは。やっぱりだよね。あーどうしよ。こっちで生活するのも悪くないけど。魔界に残してきた三人の事も気になる。そうは言ってもどうにもならないし。とりあえず真琴さんに相談するしかないよね」
「そうですねマスター。こちらの世界で生き延びる為には、住居と食糧の調達が必須となるでしょう。最優先の確保が必要です」
「大袈裟ね。そんなの真琴さんたちが何とかしてくれるわよ。心配はないと思うわよ」