魔族のしるし その2
「ちょっと巫女さん!」
ニヤニヤしている巫女さんの袖を掴み、路地裏へと連れ込む。ここなら人目につかない。
「ちょっとフレデリカ。妾はそういう趣味はないのね。百合行為は凛を誘うといいのよ。彼女も喜ぶと思うのね」
「私も違うわよ。そうじゃなくて、このコスプレ扱いで人集りが出来ちゃう事についてよ。話が違うじゃない。秋葉原ならこの姿でも大丈夫っていうから私は」
「えっ?全然大丈夫じゃない。悪魔だなんて指摘してくる人いないじゃないのよ。妾が正しいじゃないのよ」
「い、いや。確かにそうだけど。違う意味で悪目立ちしちゃってるのですけど」
この人の口元……笑ってる。絶対楽しんでる。
「もしかしてコスプレの事?それなら妾だって巫女服なのよ。フレデリカと一緒なのよ」
「それは私の角が……もう……いいや。私帰ります」
掴んでいた巫女服の袖を離し、回れ右をする。
「あら?フレデリカ。今って力を使い果たしちゃって瞬間移動とか出来ないのではなかったかしら?一人で帰れるのかしら?襲いくるカメラ小僧を跳ね退けて無事に帰れるのかしら?」
うっ……そうだった。
今の私は魔力切れで普通の人間と変わらないのだった。
「ちょっと!今すぐタマヨリを呼び出してよ!彼女なら何とか出来ると思うの!さぁ!早く!チェンジチェンジ!」
折れていない方の手で巫女さんの肩を掴み前後に揺らす。
「ちょっと。そんなに揺らすと酔って気持ち悪くなるのよ。あと、そんな事で御呼びするのは無理に決まってるでしょう。タマヨリ様は妾の御先祖様と言っても神に近い存在なのよ。フレデリカもお別れしたでしょうに」
「くうっ……だったら私はどうしたらいいのよ。こんな見せ物になるなんて。不本意だわ……世界を救った救世主と言ってもいい私が……こんな扱いを受けるなんて。私の魔力はいつになったら……」