昔の親友 その2
「へっ?タマヨリ?タマヨリって何?」
巫女さんの『きょとん』とした声がする。
影になっていて見えないが、表情も同じ様に『きょとん』としているに違いない。
私ってばバカみたいだ。
寝ぼけておかしな事を口走ってしまった。
ううっ。よくわからないけど泣きそうだ。
何なんだ。この感情。
そんなに昔が恋しいのか。
私は魔王だぞ。こちらの世界を含めて一番強い……はずなんだ。
「ごめんなさい……うぐっ。ゴメン巫女さん。私……なんか昔の事思い出しちゃって。違うの。この涙は……ちゃんと任務完遂できたから……嬉しくて。ううっ……」
これで私も完全に『変な人』認定だ。
「ごめんごめん!泣かないで!タマヨリだよ。フレデリカの言う通りだよ。体はこの子だけど、魂と言われるものはフレデリカの知っている『タマヨリ』そのものだから。泣き虫は昔から変わらないんだから。ねっ?泣かないの。よしよし」
タマヨリ?ほんとに?
自分で言っておいてアレだけど、おかしな事を言った自覚はある。なんとなく感じた事を口にしただけなのに。
本当にそんなことが……
パチッ
巫女姿の影が壁にある照明のスイッチを入れる。
一瞬だけ明るさで目が眩むが、すぐに巫女姿の女の子が目に映る。
見た目は完全にボーイズラブを好むあの巫女さんだ。
「タマヨリぃ……本当にタマヨリなの?私……私……」
二百年以上前の記憶が鮮明によみがえる。
天使と戦って。
いろいろな国の復興を手伝ったり。
一緒に『黄色の勇者』であるニーサちゃんの子と遊んだり。
天命を全うしたタマヨリが息を引き取った時にも、手を握って見守った。
「私ね……寂しかったんだよ。ううっ……みんな死んじゃって、私だけ取り残されて」
「そっか。フレデリカは頑張ってるんだね。偉いよフレデリカ。私はね。現世での寿命を終えた後もショウナン国の神に仕えているんだ。他のみんなは何度か転生しているみたいだけど。今の私はこの体の子が私を呼び寄せてくれたんだ。フレデリカを助ける為にね。この子、私の子孫なんだよね。だから私の事呼び寄せる事が出来たのかもしれないよね」
「そっか。巫女さんには感謝しないとね。あとね。魔界にもね、出来たんだよ。気を許せる人が……って人とは違うかもだけど」
「そうだったね。あなたが人の世界に戻らなかった事は知っているよ。でも独りぼっちにならなくてよかったよ。あと、神の世界じゃフレデリカ有名人だから。『呪われし聖剣を操る魔界王』さん」