空の上にて その2
私の知っている声だ。
首を少しだけ傾けて見ると巫女装束が見えた。
やっぱりだ。この声の主は巫女さんだ。
すごいなぁ。
この子は、こんな事まで出来るなんて。魔法とかの概念がない世界とか言っていたのに。こんな力を隠していたなんて。
「……ははは。すごいわね。こんな高いところまで来れるなんて。さすが巫女さんだね。ふぅ……でも助かったわ。死ぬかと思った。また命拾いしちゃった。ありがと」
背中越しに感謝の言葉を伝える。
「あのねぇ。あいも変わらず目的の為なら命を捨てようとするんだから。フレデリカの悪い癖ね。昔から直ってないね。まぁ今回はギリギリみたいな感じだから仕方ないのかもしれないけれど。でも最初から本気でやれば余裕だったんじゃないの?」
「????」
頭の中で『?』が高速でクルクルと回り始める。
巫女さんと感じたのは間違いなのだろうか?
声は確かに巫女さんの声だ。
「あ、あの……私……勘違いしているのかもしれないけれど、あなたの事……私は巫女さんだと認識しているのだけれど。人違いだったら……ごめんなさい」
魔力を使い果たしてしまって精神的に弱っているせいかもしれない。思考が上手く機能しない。
「ふふふっ。半分は正解だよ。さて私は誰でしょう?」
口ぶりから私のことを知っている人物であることは確かだ。
半分?半分って何なのよ。人物当てに半分も何もないじゃない。
こんな時に蒼の剣がいてくれたら……
「そうそう。これ大切なものでしょ?はい……って持てないわよね。私が預かっておくね」
私の思考を読んだかの様に、青いクリスタルの剣が目の前に差し出された。
「あ……蒼の剣……回収してくれたの?ありがと……」
「いいのよ。あとは任せて。今は眠りなさい。ちゃんと地上まで送るから。安心して。おやすみなさい」
「あ……ありがと。おやすみな……さい」
何者かわからない人物の『おやすみなさい」の言葉に何故か安心感を感じた私は、一瞬で深い眠りへと落ちた。