全ての力を その2
「次っ!」
纏った魔法力が一番近い欠片に導いてくれる。
私は最大速度で突っ込み剣を振り抜けばいい。
急旋回にかかるGは蒼の剣が重力魔法で軽減してくれている。
これなら余裕で乗り切れる。
二個目の欠片を三十連斬で微塵切りにした。
蒼の剣自身も自らを魔法で強化している。
南瓜を切るくらいの手応えで、巨大な岩石は小さな岩石へと姿を変えた。
「四つ、五つ、六つ!」
魔力を纏わせた斬撃を飛ばし三つの岩石の塊を、まとめて吹き飛ばす。
「はぁはぁ。やっぱり少しだけキツイなぁ。息が切れる」
この『閃光』という奥義。ロックオンした対象を魔力の帯で次々と一筆書きの様に導いてくれる。
だけど結局は術者の能力が元となる。
ただ落ちてくるだけとはいえ、こんな巨大な物体を大量に処理しなくてはいけない。しかも……
「くっ!これで十五!速度が……追いつかない」
隕石の落下速度が想像以上に早い。
最速の技の『閃光』が遅れはじめている。
「マズイ!」
一個取りこぼした。
「お願い!蒼の剣!」
右手にある相棒を解き放つ。
魔力を蒼の剣に流し込む。
それと同時に手の中から蒼の剣が消えた。
おそらく取りこぼした隕石まで転移したのだ。
次の瞬間、足下の方から落雷のような爆音が響き渡った。
よかった。ちゃんと仕留めてくれた。
「それよりも……」
こっちは全然よろしくない。
蒼の剣を手放してしまった。
すでに複数の隕石が視界内に入っている。
あれらを素手で処理するのは絶対に無理だ。
「まいった。お手上げだわ。しかたがない…………諦めしかないか。嫌だなぁ……最悪だ。でも『背に腹はかえられぬ』ってやつだ」
もう魔力の底も見えてきた。
覚悟するしかない。
胸の前で手を組み、トリガーとなる言葉を叫ぶ。
「漆黒解放‼︎」




