ライセンス
難しい。思っていたのと違う。
練習の時は、舗装された道を、目印を目標にして曲がったりしていたけど……この荒野には目印がない。あたりまえだけど。
それに練習の時はこんなにスピード出ていなかった。
何が難しいって、上手く……いや普通にも曲がれない。
車体があまりにも大きすぎて、しかもスピードが出ていて
操縦桿を操作するタイミングがわからない。
こんな状態の生徒に運転資格与えていいの?
いや、良くない!これは帰ったら正式にクレームを入れよう。
今はもう真っ直ぐ走る事だけを考えるしかない。
ここまで事故がないのは、握りしめて御守りにしている、この大型魔法戦車の運転資格証のおかげだろうか。
よくわからないが手汗でぐっしょりになっている気がする。
この御守りは濡れても効力あるのだろうか。
ピピィ!ピピィ!
突然の音に、体がビクッと反応する。
何なの今の音⁉︎敵⁉︎
「うーん……はぁ」
なんか下で声がする。
「うぅ……あっ、フレデリカ……ありがとう。止めていいよ。交代しよう」
目覚ましのアラーム音だった。
「あっ、あはは。おはよホーク。よく寝れた?うん、何もなかったわよ。うん、異常なし」
何事もなかったかのように装い……いやほんとに何もなかったし。とりあえず、ゆっくりと停車させる。
操縦桿から手を離す。
予想通りに運転資格証は手汗のダメージを受けていた。
帰ったらアイロンかけよう……
安心して冷静になると、まわりに計器やらなんやらがある事に気づく。
操縦に夢中で、こんなの全然目に入らなかった。
目の前のモニターには車両の状態が表示されていた。
ふーん、これが残りの魔法力の残量なのね。
自分のカラダの状況が映っているのは不思議な感じだ。
で、この三十二箇所に分配されて、いろいろ動いていると言う事なのかしら。
「フレデリカ。戻すよ」
ホークがパネルを操作する。
私のまわりにあったモニターや操縦桿が元の場所へと綺麗に折りたたまれ戻っていった。
「十五分だけ休憩しよう」
ホークがシートに身を投げ出す。
私も真似しよう。
「はぁ、疲れた」
やっぱりホークはすごいな。
こんなの簡単にこなしちゃうんだから。
座ったまま伸びをする。
「うーん……気持ちいい」
緊張で固まっていた筋肉が解放されていった。