高度一万五千メートル その2
この子は私の出来ない事を簡単にやってのける。
多分だけど、魔力供給をした蒼の剣と本気で戦ったら……勝てない気がする。特に、魔道士らを空間ごと切った技の対抗策は今だに見出せない。
これじゃあ昔の『タンク』時代と何も変わらない。
今の私は蒼の剣が所有している燃料タンクみたいなものだ。
「………………」
全然笑えない。冗談としては使えないかも。
まぁ『タンク』の存在自体が歴史から抹消状態だし、このジョークは誰にも通じないかもしれないけど。
「マスター。目標を捉えました。現在地から十八万キロの地点です。予測よりも超高速で接近中の為、現時刻から射撃を開始してください。命中率向上の為、私自身をマーキングとします。あらゆる事態を想定し、マスターの一割分の魔力のチャージを推奨いたします」
「わかったわ。おいで蒼の剣」
柄を握り魔力を送り込む。
魔力が抜けていくのがはっきりわかる。
いつもは私が力を込めているだけだけど、今は蒼の剣からも積極的に吸収している。いつもよりも急速に魔力が減っていくのがわかる。
「これなら普段から少しずつ魔力を渡しておけばよかったわね」
「そうですね。今回のオペレーションから学習しました。今後、マスターさえよければお願いします……マスター。予定量の魔力エネルギーがチャージできました。射撃体制へと移行しましょう」
私の手から離れた蒼の剣は魔導砲の先端部で空と対時する。
「では、私は一足先に目標まで跳躍します。跳躍と同時にターゲットに張り付きますので……計算上十五分後に発射をお願いします。私の方で誘導しますので、そのまま撃ってください。都度、修正しますのでお願いします」
「それより、あなたは大丈夫なの?移動先って宇宙で過酷な環境でしょ?それに魔導砲の直撃が当たっちゃったら……」
「問題ありません。高レベルの絶対障壁を張りますので大抵の衝撃はガード可能です」
「ははは……もう何でもありね」