作戦開始時刻 その3
おっと。
女の子に手を振ったはいいけど、ここは塔の先端だ。
一般の人が立ち入っていい場所じゃない。騒ぎになる前に空に上がってしまおう。
再び、空間を跳躍する。
休日を楽しむ人々の姿が消え、かわりに先程までいた島が眼下に見えた。
「さてと……行こう蒼の剣。ガイドお願いね」
「了解しました。ここからは気圧の問題があります。通常の飛行で高度を上げていきましょう。大丈夫です。まだ時間はあります」
「そう。あなたが言うのだから安心ね。ありがと」
凛ちゃんの真似をして蒼の剣を優しく撫でる。
ふーん……なるほど。何故かわからないが、この子が喜んでいる気がする。
空を見上げる。
この方向に目標があるはずだけど、まだ影さえも見えない。
真っ青な空に白い雲の山脈が連なっている。
すごく綺麗だ。
世界が滅びるかもしれない直前なのに。
この世の終わりなんて、こんな感じで呆気ないのものなのかもしれない。
流れる雲を見ながら、ゆっくりと加速していく。
さっきまでいた塔は、すでに小さくなって見えない。
ここまで上がると陸の形がよくわかる。
「フレデリカさん?聞こえる?」
耳に付けている通信機器から声が聞こえてきた。
「真琴さん。さっきはありがとうございました。真琴さんのおかげで心が落ち着きました。これなら上手く出来そうです」
「そう?よかったわ。本当に申し訳ないけど、ここから先はフレデリカさんに丸投げになっちゃうから」
「いいんですよ。私がやりたくてやるんですから」
これは本心からの言葉だ。
「そうなのね。そう言ってもらえると嬉しいわ。あなたには感謝の言葉しかないわね。それと……どうしようかしら。終わってから話そうと思ったけど今話しちゃおうかな」
「えっ?何のことですかー?もう気になっちゃいましたよ。話してくださいよー」
「あぁ。そりゃそうよね……ねぇフレデリカさん。『青い剣をあやつる銀髪の冒険者』って聞いたことあるかしら?」