情報収集という名の…… その3
チュンチュンと何かの鳥が鳴いている。
清々しい朝だ……と言いたいところだが完全に睡眠不足だ。
疲労も残っている気がする。
「おはよう百合姉妹さん。昨夜はお楽しみだったのかしら?」
百合姉妹……
昨日のアキハバラ探索のイベントで、『百合』という言葉の意味は理解している。
本屋さんの棚に、沢山の可愛い絵柄の本が並んでいたのを憶えている。
……この巫女。やってくれた。
あのニヤニヤ顔から察するに全部知っていて私と凛ちゃんを二人きりにしたに違いない。
「ちょっと!わかっていて二人きりにしたでしょ!それに私たち何もなかったですから!」
「へぇ。凛の攻撃を凌いだってことよね?すごいわね。ほんとに。『魔王フレデリカ』の名は伊達じゃないのね」
「……凛ちゃんを捉えるのにどれだけ苦労したか。正面向き合って抱きついてきた時に、力で無理矢理拘束して魔法で眠らせたんですよ」
一晩たったのに、まだ凛ちゃんの感触が身体に残っている。
ついでに、二百年前にも同じ事があった記憶もよみがえる。
そういえば、あの子も同じタイプの能力だった。
『気配を完全に消せる隠密タイプは敵に回すと恐ろしい』
これに関しては二百年前と変わらないみたいだ。
まぁ、そんな奴がそうそう現れる事はないと思うけれど。
「おはようございます巫女さん。ところで二人して何の話をしているんですか?」
えっ?嘘……。
もしかして昨夜の記憶が飛んでいるパターン?
巫女さんに視線を向ける。
口元をニンマリしながら黙って頷いている。
この巫女には一度、何らかの形で報復せねばならなくなった。
「何でもないよ凛ちゃん。それよりも、宿で朝食が出るみたいだから一緒に食べに行かない?」
「はい。是非是非ご一緒させてください」
その屈託のない笑顔に、私は昨夜の所業を追求する事は出来なかったのだった。