番外編 早坂凛 死が二人を別つとき…… その5
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翌朝、早坂凛は大学に向かうために早めに家を出た。
大学の最寄り駅の前で人を待つ。
天気予報では午後から天気がくずれてくると言っていたが今のところ青空が広がっていて絶好のお出かけ日和だ。
凛は空にある大きな雲の塊がゆっくり移動していくのを眺めながら親友を待っていた。
たまに吹く風が気持ちいい。
しばらくすると乃木唯が駅から出てくた。
彼女はすぐに駅前で立っている早坂凛を見つけると、早足でこちらにかけよってきた。
日課のハイタッチ。
「おはよー凛!」
自分の彼氏に不幸があった事を知らない親友に、それを悟られない様に普段通りに振る舞う。
「唯、今日どっか遊びに行かない?だめ?」
授業をサボって遊びに行くという行為が早坂凛の行動として不自然なのだが凛は気づいていない。
「全然大丈夫だけど。でも凛がサボろーなんてはじめてきいた。なんかあった?」
本気で心配し自分の顔を覗き込む様に観察している親友を見て、早坂凛はとても悲しい状況なはずなのに幸せを感じた。こんな親友がいてくれて自分は恵まれている。そう思った。
「ちょっと疲れちゃって。少しだけ息抜きたいだけ。ダメかなぁ?」
ほんの少しだけ甘えた感じの演技を入れてお願いしてみる。
「いいよ。凛がそう言うなら。どこにでも付き合うよ」
「唯ありがとう。嬉しい」
乃木唯は自分に何かあった事に気付いているみたいではあったが、あえて何も聞いてこない優しさに泣きそうになる。
「どこに行きたい?凛の好きなとこでいいよ」
「じゃあ……水族館とかいいかな……ちょっとだけ遠い……かな?」
「大丈夫だよ。水族館いこっ」
「ありがと」
水族館まで電車で約一時間。
途中乗り換え一回。平日の昼間で電車もホームもガラガラ。乗り換えもスムーズだった。