番外編 早坂凛 死が二人を別つとき…… その4
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早坂凛は、日向聡に対してとても献身的だった。
「仕事が終わって自宅に帰ってきた時、家に夕飯が用意されてたら嬉しいな」
そう話していたので、大学が終わったあとに夕飯を作るためにだけに彼の家に行った。時間もあまり余裕がないので簡単なものをつくり、温めればすぐに食べれる様にセットし遅くならないうちに彼の自宅を出た。
休みの日にはお弁当を作り会社まで届けたりもした。ほんとうは直接渡したかったが、さすがに同僚の目があるので受付の人に預けた。
掃除や洗濯もやったし、彼が喜ぶと思う事は何でもやった。
日向聡の自宅に行った時の楽しみの一つに彼の寝顔を見る事があった。仕事で疲れてソファーで眠ってしまう日もある。
髪をさわりたい衝動はあったが彼を起こしてしまうので我慢した。穏やかな寝顔を見るだけでも満足だった。
部屋を片付け、起こしては悪いので物音をたてない様に、そっと部屋を出る、
朝食は簡単なものではあるがテーブルの上に用意してきた。
「ちゃんと食べてくれるかなぁ」
そんな事を考えながら帰路につくのであった。
そんな彼がいなくなった。
ずっと口の中がからからに乾いている。
頭の中がぐるぐると回っていた。
胸のザワザワが止まらなかった。
カラダに力が入らない。
ショックで通夜には行けなかった。告別式には行かないといけない。そのあとに自分自信も命を絶ち、彼と一緒になろう。
ぼーっとしている頭の片隅でそう考えてぁた。
それくらい早坂凛は日向聡に夢中だった。
それから早坂凛は両親に手紙を書いた。今まで大切に育ててくれた事に対する感謝の手紙。いつもよりゆっくりと一文字一文字丁寧に書いた。
そして書き終えると、朝まで静かに泣いた。