表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
新第一章 魔界の女王
296/436

番外編 早坂凛 死が二人を別つとき…… その2


             2

       

   

 早坂凛。

 彼女は国内でトップクラスの超難関大学の一年生である。

 高校時代は生徒会長をつとめ信頼も厚かった。

 異性からはもちろん、同性や教師からも好かれるほど、まわりから慕われる生徒であった。典型的なスーパー優等生。

 容姿は、名前の通り凛々しく美しい。とくに美しく長い黒髪は同級生の女生徒には羨ましがられた。

 自分の容姿や学力が優れている事は自覚してはいたが、決してそれを鼻にかけたりはしない。

 誰にでも差別なく接し、人懐っこい性格で、まわりにすぐにうちとける事ができた。

 そんな完璧な早坂凛がある青年と出会う事になる。

 

 

 

 その青年の名前『日向聡(ひゅうがさとし)

 早坂凛の三つ年上の会社勤めの普通の男性である。

 日向聡は高校卒業後、社会人として働く道を選んだ。

 別に学力が足りなかったわけではない。

 本人曰く、


「これ以上勉強したくない」


 人生で成し遂げたいことや目標があるわけではない。

 しかしながら彼は、仕事に対して熱心でミスなくきっちりこなす。

 能力的にはなんでもできるが突出したところは見あたらない。

 器用貧乏と言われてしまうかもしれないが、現代社会においてこの『そつなくこなす』というのは重宝されるものである。

 だから職場での信頼はそれなりにあつかった。

 そんな彼が通勤途中の電車内で早坂凛と出会う事になる。

 


 毎朝、決まった時間。決まった改札。決まったホームから決まった車両に乗り込む。

 日向聡は車両の連結部のところがお気に入りだった。

 そこにいれば、たとえ車内が混み合う事になったとしても自分のスペースを確保する事ができるからである。

 その場所から目的の駅まで、外の風景や他の乗客を眺める。

 そんな毎朝の電車内。ひときわ目を引く女生徒がいる。

 彼女も毎朝、同じ車両の同じ場所に立っていた。

 ドアの真横に彼女はいる。

 美しい黒髪の美少女。

 高校生の早坂凛である。

 彼女が学生である事は身につけている制服で一目でわかった。

 他の乗客もチラチラ視線を彼女に送っている。


 ある蒸し暑い朝、早坂凛の制服のポケットからハンカチが落ちた。

 ハンカチで汗を拭ったあと、それをポケットに戻そうとした。しかし、上手く入らずポケットからこぼれ落ちたのだ。

 彼女は、それに気づかなかったが、距離が離れたところから見ていた日向聡には、落ちたハンカチがよく見えた。

 本人は気づかず、近くの人も誰も指摘もしない。

 仕方なく近づきハンカチを拾う。

 軽くはたき、彼女にハンカチを差し出す。


「これ。落としましたよ」


 お互い目が合った。


「あ、ありがとうございます」


 戸惑いながらペコリと頭を下げる。


 これが早坂凛と日向聡の馴れ初めである。

 早坂凛は同級生の親友に、そう話している。

 

 その日から早坂凛は日向聡の事を目で追うようになる。

 今まで気づかなかったが、彼も毎朝同じ車両の同じ場所にいる事がわかった。

 日向聡に一目惚れした事にはすぐに自覚した。

 しかし、恋愛経験が豊富ではない彼女は話しかける事が出来なかった。

 毎朝、同じ車両に乗ってはいるが告白までにはなかなか至らない。しかし自然と彼の事を目で追う様になる。

 そんな日が一年以上続いた。


「ねぇ凛!古典的だけど手紙書こうよ。連絡先書いてさ。あまり重くならない様に簡単にね。私も手伝ってあげるからさ。そうねぇ……来月の卒業式の日に渡そう!」


 一番の親友が背中を押してくれる。

 そして高校三年生の最後の朝。親友の協力で、ようやく連絡先を渡す事に成功した。

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ