異世界転移? その7
嫌悪感と虫唾が走る。
腐った肉を喉奥に詰め込まれた様な不快感と嘔吐感が止まらない。
「うっ……これは犠牲者……しかも女性と子供ばかりの……」
現場の写真だろうか。惨たらしい犠牲者の姿。
衣服を剥がされ傷だらけの体。苦悶の表情のまま息耐えた女性。
もはや人の姿をとどめていなものもある。
「わかったのかしら?コイツらは、他者に命を奪われても文句は言えない奴ら……いいえ。言わせはしないの。あなたも悪魔でしょ?人の命なんて平気で奪ってきたのでしょうに。あなたもコイツらと同類よ」
「ち、違う!私は……」
私の背負っている十字架の重みが増した気がした。
この巫女の言うとおりだ。
私は大勢の人の命を奪った。
更生のチャンスどころか、命乞いした者も問答無用で斬り捨てた。
二百年以上経っているのに十字架の重みは増すばかり……
当然だ。この罪は、私が死ぬまで祓われることはないのだから。
「何なのよ?その顔は。それは涙なのかしら。訳がわからないのよ。まぁ、どうでもいいのよ。お前には契約の内容だけ果たしてもらえばいいのだから」
巫女の一言一言が胸に突き刺さる。
重い……全てが重く感じる。
手の中にある紙の資料までもが重い。
胃から逆流するものを必死に抑える。
「あらヤダ。私まで不安になってきた。不味いのよ。妾としたことが、ほんとうに失敗したのかしら。時間がないっていうのに。他に手があるかどうか……」
「いいわよ……何でもやってやるわよ。早く要件を言いなさい……」
今の私がすべき事は……
この契約を完了させる事だ。
そうしないと、契約破棄の代償として、私の命を捧げないといけなくなる。魔界の居城に残してきた天使たちの事も心配だ。
まぁ彼らは私の事なんて、なんとも思っていないかもしれないけど。
「やっと話が通じたなのよ。最初から妾の命に従っていれば無駄な時間をかけなくてもよかったのに。それじゃあ私についてくるのね。さぁ。こっちよ」




