名もなき魔導具 その4
「それじゃあ、この子に使ってみようかしら。ねぇ?竜の人。このアイテムの失敗は大丈夫なのかしら?」
「は、はい。時間をかけて試験に試験を重ねております。今のところ失敗はございません。竜族のプライドと名誉にかけましても。それよりも!我が一族の魔道具を誉れ高い蒼の剣に!それだけで一族の名声は魔界に鳴り響くでありましょう!ううぅ……」
「ちょっと。こんな事で感動しないでよ。それより信じるからね。このアイテムのこと。それで?どうやって使うの?」
私の大切な家族とも呼べる相棒に関わる事だ。ちゃんと使用上の注意を聞いておかなければ。
「はい。ほんの僅かな魔力を玉に込め、対象の道具にぶつけるだけで発動します。その道具の愛用者が行なった方が、効果が高いと判明しております。そちらの剣ですと魔王フレデリカ様が相応しいですので問題はないかと」
そっか。問題はなさそうね。
でも、この子嫌がらないかな?
蒼の剣の刀身に左手を添える。
(ねぇ?嫌じゃない?こうする事で、この先ずっとあなたと一緒にいられる気がするの。私……あなたが壊れちゃうんじゃないかって心配で。だからいいかな?)
蒼の剣が優しく光る。
「おおぉ!」
竜族の使者が意味不明の感嘆の声を上げる。
彼にはわからないだろうけど私には分かった。
蒼の剣も賛同してくれている。
(ありがと。すぐ終わるから。ちょっとだけ我慢してね)
剣から手を離す。
蒼の剣は落下せず、その位置で止まる。
箱から竜族の魔導具を取り出し両手で包む。
虹色に輝く玉に想いを込めて魔力を注ぎ込む。
手から魔導具に魔力が流れていくのを感じた。
美しく輝く宝玉がさらに輝きを増す。
玉の中で力が渦巻き始めるのを感じる。
「さぁフレデリカさま。そのまま蒼の剣に玉を押し付けてください。何の抵抗もなく剣が玉を吸収いたします」
言われた通り刀身に触れさせる。
宝玉は吸い込まれるかの様に消えた。
不思議な感覚。
もう一人の自分自身が、蒼の剣と同化する様な感覚だった。