魔王フレデリカ その7
あのビジョンが脳内に焼き付いて離れない。
インキュバスのメルセリウム。
あの淫魔。
あの種族って夢の中で行為に及ぶのではなかったのか。
なのに私の居住している城の中で。
デスサイズもまんざらでもないみたいだし。
別に普通の仕方だったらいいのよ……
なのにあの二人ってば……あんな私の知らない行為を……いや記憶とはいえ覗いちゃった私も悪いけどさ。でも……
やだっ……また思い出しちゃった。
とにかく。ああいう卑猥なのは城の外でやってほしいわけよ
「フレデリカ様。城の外でとは?何をでしょう?」
「あっ……えっ?私いま何か言ってた?」
「はい。えっ……と、私の知らない行為が……とか。二人して恥ずかしいことを……とか」
私ってば頭の中で考えている事が口に出てしまっている。
マズイ……マズイよぉ。
魔界で生活するようになって、話す相手がいなくなってから、ひとり言が増えたのは自覚していたけど……
「ち、違うのよ!そんな事言ったかしら。聞き間違いだと思うよ!あっ!そう!今度、あなたと二人でお酒でも飲みながら女子会みたいな事したいなぁって!女の子同士なら、男の人には話せない恥ずかしい事も話せて楽しいかなって」
私とした事が。慌て過ぎか。
「女子会というものが何かわかりませんが、フレデリカ様と二人と懇親の場が頂けるのは嬉しく思います」
慌てて取り繕ったけど、意外にも信じてくれた。
しかも、なんか喜んでくれてる。
そうだよね。同い年の女の子とかいないだろうし、こんな殺伐とした世界で『きゃっきゃ』することなんて出来るはずもない。
「あ、あははは。私から連絡入れるから待ってて。楽しみだなぁ」
何これ。私も楽しみになってきた。
私とは性格正反対な子だけど、話せば案外仲良く出来るかもしれないなぁ。
それにしても私ってば。
そもそも記憶を読み取ったのってだいぶ昔の話だ。
夜になるとデスサイズとメルセリウムが、同じ寝室に向かい一緒にいるのは気にはなっていた。けどそれは彼らが恋人だからだ。
普通に、ただ単に男女のお付き合いをしているだけなのだ。
それなのに私ってば、二人を変な目で見てしまっていた。
汚れているのは私の心だ。
でも、念のため……一応……
デスサイズには、悪いけど確かめさせてもらおう。渇ききった女子心が恋とか愛とかに飢えているの。