番外編 新章序章 魔界での戦い その4
「どうして。あんなに憎んで忌み嫌っていたのに。自らの意思でこちら側に来るなんて」
一番の疑問はこれだ。
地獄の日々に耐えられなくなったのか。それとも、私に護られるという事実にプライドが限界を迎えたか。
「ではフレデリカ。早速ですが手合わせをお願いできますか。これは殺し合いではなく、力の確認ということで」
なんだ後者か。
魔界での枷が外れたくらいで私を倒せると考えているのだろうか。
この一年。何もせずに過ごしていたとでも思っているのか。
剣術や魔法、体力や筋力。魔界の知識まで。出来る限りの努力をして過ごしてきた。みんなのことを守れるように。あんな悲しいことを二度と起こさせない為に。
だから私は負けない。
「ねぇ。ほんとうに私のこと倒せるとか思っていないよね。あなたの強さは忘れていないけど、この一年のブランクは大きいのではないかしら」
「フレデリカ。先ほども申したとおり。これは力の確認です。貴女がどれくらいの力があるのか知りたいと考えているだけです。これから私は火炎の魔法を全力で撃ちます。何の小細工もない、ただの火球です。貴女も同じ火球で応戦してください」
「ちょっと。全然意味わかんないんだけど。何が狙いなのよ」
「それは終わったあとに説明します。ではいきますよ」
天使が……いや堕天使が右手をこちらに向ける。
手のひらに膨大な魔法力が集まる。
「あら。やるじゃない。これなら私がいなくても、やっていけそうじゃない。じゃあこれは一人立ちの卒業試験ってやつかしら」
以前天使が使った炎は、光輝く白い聖なる炎だったが、今目の前にらあるのは暗黒の炎。
私も右手のひらを堕天使に向ける。
魔力を練り上げ炎を作る。
真紅の炎が手のひらに……あれ?
何週間か前に撃った時は赤い炎だったのに。
今は紫色の炎が発現している。
「まいった……」
魔界に長期にわたって滞在していたことで、私の体質が魔族に近づいていっている。
堕天使から黒い炎が放たれた。
炎の軌道上にある草木が燃え上がる間もなく、炭となってら塵になる。
かなりの高温。なかなかやる。
「これくらいかな」
一瞬だけ溜めをつくり一気に炎を撃ち出す。
黒と紫の色をした爆熱の炎は真正面から衝突し、周辺に灼熱を撒き散らした。