番外編 新章序章 魔界での戦い その1
「おのれ……いつの間に……こんな腐れる世界に……ぐわわわっ!」
天使が喰われている。
二足歩行する牛……いや。頭部が牛の魔人と言った方が正しいかもしれない。頭から下は人と変わらない。
身長は私の十倍ほどある牛の魔人に、大天使は喰われていた。
しかも、体のほとんどの部分を咀嚼され、原形をも失って絶命した。
そして次の瞬間。無敵の大天使は再生を始める。
数分で元の体に戻った天使は、再び別の魔物の餌食となる。
その繰り返し……
この世界で、天使などは絶好の獲物。
食事とされることもあるが、ほとんどは使い捨ての生きた玩具で惨たらしく殺される。
「ぎゃわわ!ぐはぁ!も、もう殺してくれぇ!もう終わりにぃ!うぐあはぁ‼︎」
これで何度目の断末魔だろうか。
すでに一週間以上、殺され続けている。
表の世界である人間界では、天使の方にアドバンテージがある。
だが、魔界に引きづり込まれたことで、パワーバランスは逆転した。
彼が勝負できるのは下級レベルの魔獣だけだ。それ以外の魔の者には、ただ蹂躙されるのみ。
私にすら敵わない。
再び、光の粒子が集まり、天使の体を形成していく。
どうやら大天使でも、自由には神の元には帰還出来ないらしい。
不死ゆえに、死亡しての帰還が出来ないのが裏目にでている。
「うわー!も、もう!耐えられない!おかしくなる!フレデリカぁ!助けてくれぇ!私を守れぇ!」
この天使を助ける義理などないけど。
「ねぇ。どうにか自力で戻れないの?私の家族にしたこと。忘れたわけじゃないでしょ。私があなたを守ると思うの?」
「わ、悪かったぁ!何でもする!何でもするから……ぎゃああ!」
「私と会話している場合じゃないでしょ。この牛頭に食われるの九回目よ。あなたが今すべきは、牛頭のいるこの場から離脱することよ。って……もう聞こえないか。また復活したら教えてあげよう」