フレデリカ その2
さて。お洗濯しないと。お天気がいいうちに済ませたい。
ビリリ
何だろう?空気が震えた……?
違うかな。空気というより世界そのものが震えた感じがした。
「これは……よくない気配」
最近は平和だったから忘れていたけれど、この場所は世界の裏側にある、闇の世界に一番近い場所だった。
その闇の世界は魔界とも言われる場所。
低級な魔物は稀にでるけど、ここまで良くない感じは久しぶりだ。
「まずいなぁ。わたしだけで凌げるかな」
勇者の力は今も有している。鍛錬も怠っていない。
わたしだって、まだまだ出来るはず。
だけど今はわたし一人しかいない。少し不安だ。
でも、そんな事は言っていられない。あの人が帰ってくるまで、わたしが世界を守らないといけない。わたしがみんなや家族を守らないと。
腰と背中に剣を差す。
背中の魔法剣は十年以上使っているが、まだまだ現役だ。
「いくよっ!」
出撃の意志をあえて口にして気合いをいれる。
地面蹴る。
ピンク色の花びらが渦を巻くように舞い上がる。
魔法感知で辺りを探る。
「見つけた……けどマズイかもしれない。わたし一人じゃ」
潜在戦闘力は測れないけど、表面的な魔力だけみても力が大きい。まともにぶつかったら勝てないかもしれない。
気配を消して、接近からの暗殺が一番いいかもしれない。わたしの得意とする戦法だ。
わたしは勇者だ。ちゃんとしないと。
ドクッ!
心臓が跳ね上がる。
「嘘……」
先手を取られた。
突然、敵の気配が背後に現れたのだ。
瞬間移動?
向こうもわたしの存在に気付いていた。
緊張と恐怖で、息を吸うことを意識しないと呼吸ができない。
(距離を……距離をとらないと)
浮遊の魔法を解除。
重力の力で地上に降りる。
着地と同時に空を見る。
逆光で姿は見えないけれど、シルエットから普通ではない事はわかった。
何故なら、そいつの背中からは大きな翼が生えていたのだから。