最強コンビ その4
「まったく。耳が痛いわね。それはそうと、これじゃあ撃てない。先にタマヨリを助けないと」
タマヨリほどの達人があんな容易に捕らえられてしまうなんて。
あの天使……遠距離攻撃以外も出来るということ。
「フレデリカ!いま離れると動力が落ちてしまう。俺が行く!だからそのままで待っていてくれ!」
「無茶よ!あなた空飛べないでしょ。どうしようっていうのよ。この状況じゃ私が行くしかないよ」
「フレデリカぁー!」
車両外マイクから音声が飛び込んできた。
タマヨリの叫びだ。
「いいから撃ってー!どの道コイツを倒さないとー!倒さないと世界がー!私の国も終わっちゃうからー‼︎」
なんてお約束な事を言うのだろうか。そんな事出来るわけないのに。
「この裏切り者の巫女め。アイツらが身内を犠牲にできるわけがないだろう。何が優先すべきかもわからない愚かな生物どもめ」
あの天使。私たちの事よくわかっている。さすが神様の使いっ走りだ。
「そういうわけだからホークごめん。私行ってくる。あの子の事見捨てるなんてこと出来ない」
「わかってるよ。天使をどうやって退けるかは後で考えよう」
うんうん。やっぱりだ。ホークは私の良き理解者だ。
この人と一緒に戦えてよかった。
「ぐわあっ!」
突然の絶叫がが辺りに響き渡る。
今度は何事だ。まぁ、天使の声での悲鳴なら悪い事ではないだろう。
「くそがぁ!またあの女勇者か!頭でも潰しておくべきだった!」
右腕を失った天使が絶叫しているのが見えた。
もちろん、その手で掴まれていたタマヨリの姿も消えている。
女勇者……
よかった。無事だったんだ。流石ステルス勇者。
「フレデリカさん!タマヨリちゃんは大丈夫です!やっちゃってください!」
「ありがとうニーサちゃん!あなた最高だよ!」
外から聞こえた声に賞賛と感謝を飛ばす。
「いくぞフレデリカ!」
「わかってるよホーク!私の魔力全部持っていけ!全力全開‼︎」
どのくらいの範囲で。どのくらいの威力で魔法が放出されるかはわからないけど、空に放つから地上へのダメージは気にしなくても済む。
『「いっけー‼︎‼︎‼︎‼︎」』
地に沈む様な重厚な衝撃が車体にかかる。
超巨大な鋼のボディであるからか、想像より遥かに車体は安定している。ひっくり返る素ぶりなど微塵も感じないほど、地面にがっしりと張り付いている。
外を映し出しているモニターは、魔道砲の光で全て真っ白になり外の様子は一切確認できない。
ホークが調整した広範囲の魔力の帯に天使が飲み込まれる様は確認できた。
魔力を展開して気配を探る。
天使の気配や魔力は感じない。
多分やっつけた。
でも自分の目で確認しないといけない。
天使の存在を確かめる為、爆煙で覆い尽くされている外の世界へと足を踏み出した。




