叡智の遺産 その2
三人の勇者が一斉に動く。
天使に対して三方向から攻撃を仕掛ける。
しかし、見えない壁が三人の剣を弾き返した。
「私の絶対防御その2ですよ。自動防御。私の注意がある限り、四つの障壁が自動で攻撃をガードします。相当なスピードで来ないと余裕で間に合っちゃいますよ。ふふふ」
突破口を見失い、三人が距離をとった。
「さすがに手強いな。リンク!ニーサ!バリエーション四十二で打ち崩す。各自、必殺の一撃で仕掛けるぞ!」
バリエーション攻撃。
あの三人の必殺連携攻撃だ。
私も初見の時は見極められなかった。
「バリエーション?ああ……なるほど。勇者よ。その攻撃は部下の天使より聞いているぞ。三人の連続攻撃だろう?先の攻撃は囮で、隙を生み出し。その後の攻撃でトドメを刺す。そんな連携、一個一個の攻撃に注意すればいいだけのこと」
「あーあ。バレているのか。だがオレらにとっては必殺の一撃。それに誰の攻撃が本命の一撃か見極められるかな?確率三分の一だ。いくぞ二人とも!」
三人の姿が消えた。
以前、私が見たのはニーサの攻撃が本命だった。
先の二人の派手な攻撃に注意を注がせ、死角から気配を消してのニーサの一撃。今回は……
ゾワゾワ
突然、鳥肌が立つような巨大な闘気が現れた。
天使の頭上だ。この闘気は……スパーク。
「すへの闘気を、この一撃に込める!バリアーごと貴様を貫いてやる!闘気爆炎突き!」
「意表をついて最初の攻撃が本命か。だが甘い。私の四枚の自動防御は重ねる事も出来るのだよ。その決死の一撃も二枚重ねのバリアーを使えば余裕で……ぐはっ!」
天使の胸から剣が突き出ていた。
「天使さん正解。一撃目が本命よ」
ニーサだ。
彼女は、天使の自動防御からも存在を消せるというのだろうか。
ザシュ!
二人の勇者はこの隙を逃さない。
正面からのリンクの袈裟斬りが天使の体を二つに切り分ける。
「これでダメ押し!」
スパークの渾身の突きが天使の頭部を串刺しにした。
すごい。
あの子たちがやってくれた。
やはり世界を救うのは勇者の役目なんだ。
三人が剣を振り払う。
分断された天使の体は重力に引かれ、地面へと落ちていった。