エンディング…… その2
太陽が昇り始めの時間に目が覚めた。
望んでいない早起きで目が冴えてしまい庭を散歩する。
こんな時間だというのに庭には先客がいた。
タマヨリだ。
彼女のことだから早朝の稽古だろう。
演舞のような動きで拳を突き出し、蹴りで空間を薙ぎ払う。
まるで見えない何かと闘っているような動きだ。
「フレデリカ。そこにいるんでしょ。よかったら手合わせしない?どうせ暇なんでしょ」
「失礼ね。私はお散歩で朝の時間を楽しんでいるの。まぁ……少しくらいなら付き合ってもいいけど」
「やっぱり暇なんじゃない。それじゃあ軽く流す感じでやりましょう。ガードさせるくらいの威力で打ち込む感じで」
「いいよ。じゃあ早速。昨夜の報復でもさせてもらおうかしら。大丈夫。そんなに全力で殴ったりはしないから。『痛たたた』くらいの力で殴るから安心して」
手首をプラプラさせ、拳を握り感覚を確かめる。
指のパキパキ音が心地いい。
「大丈夫だよフレデリカ。そんなの当たらなければいいだけだから。師匠として一揉みしたげるよ」
右手をこちらに向け手招きする。
「随分と余裕みたいねタマヨリ。私の成長の具合を見せてあげるわよ。ふふふふふ……」
「それは楽しみね。まぁ弟子が師匠に敵うはずないけどね。そうだ。ハンデで両手は使わないであげるよ。ははははは」
両手を後ろ手で組んでいる。
ほんとうに手を使わない気だ。
ふっ……舐めてくれるじゃない。
「もう本気で一撃入れてやることにしたわよ」
「口で言うだけなら容易いよ。さぁ。かかっておいで」
まったく。朝稽古なんて予定はなかったのに。
「はぁぁぁ……」
魔力を闘気に変換。
「闘気手刀」
練った闘気を拳に纏わす。
両の拳がアメジスト色に光輝く。
「何それ?」
戸惑ってる戸惑ってる。
初めて見せる技だし、驚いてもらわないと披露しがいがない。
「今まで全身に纏っていた気を両手に集中させたんだよ。これで素手での攻撃力が大幅アップでしょ?」
どうだ。たまには素直に褒めてもいいんだよ。
「うーん……いいとは思うけど……説明するよりも実際やった方が早いかも。いいよ。撃ってきてみて」
「素直じゃないなぁ。じゃあ行くよ!てりゃあ!」
地面を蹴り、タマヨリとの距離を一歩でつめる。
狙いは右肩。
振り上げた右手を最短距離の軌道を描き、最速で突く。
この突きはギリギリでかわしてもダメだ。
闘気を纏わせている。実際のあたり判定は、視認した範囲より一回りは大きい。
天使との闘いで身につけた技術。
「もらったよ!弟子はいずれ師匠を超えるものなんだからー!」