エンディング…… その1
なぁんて。
タマヨリの話した件に関しては理解している。
黄色の勇者が私に対して特別な感情を抱いていること。
でも、この件は何年も前に解決している。
彼女は、私よりホークを選んだのだ。
それは絶対的に正しい選択。
今回は、お酒の影響で間違った感情が表に強く出てしまっただけだ。
この子は間違った選択なんてしない賢い子。
隣でスヤスヤと眠る美人さんの髪を撫でる。
この子は成長しても可愛いままだなぁ。
この寝顔を見ていると、私の方が間違いを犯しちゃいそうになる。まぁ実際に、そんなことが起こる事はないのだけど。
「にしても……なんで私みたいな欠陥人間を好きになったのやら。この子の間違いはこの一点だけね」
ため息混じりの独り言を吐き出す。
「それは私のことを色々と救ってくれたからですよ。それにフレデリカさんは欠陥人間じゃないですよ」
「……いつから起きていたのよ?」
狸寝入り……
お布団から半分だけ顔を覗かせている。口元は隠れて見えないが、いたずらっ子のような無邪気な表情をしているに違いない。
「えーと。フレデリカさんが添い寝してくれたあたりからですかね」
まいった。髪を撫でたり寝顔を見つめていたりしたこともバレているっぽい。
「なぁんだ。フレデリカさんも私のこと大好きじゃないですか。いいですよ。一緒に寝てあげますよ。さぁ。もっと私に引っ付いてもいいんですよ」
「調子に乗るなぁ」
枕を顔面に押し付けて口を塞ぐ。
「明日は組み手大会に参加するんでしょ。もう寝なさい。あとお酒飲む時は周りにきをつけなさい。あなた酔うと大変なことになるわよ」
「大丈夫ですよぉ。私が襲うのはフレデリカさんだけ……」
バタン!
勢いよくドアを閉め部屋を出る。
最後の台詞は聞かなかったことにする。
部屋を出ると廊下の壁に寄りかかっている人物がいた。
「あら。久しぶりね」
不審者でないことだけはわかる。
まぁまぁ知っている顔だ。
別に親しいわけじゃないし、顔が見れたからといって嬉しくなんてない。
「やぁフレデリカ。元気そうだな」
「そうね。ホークも元気みたいで良かったわ」
スパークやリンクと一緒に我が家の居候となった『家なし男』だ。
彼も人々を守る為に天使と闘っていたと聞いた。片腕を失っている状態なのに無茶をする。しかも、それで無事に帰ってこれるなんて。この人こそ化け物ではないのか。
「ニーサのこと。すまなかったな。あとありがとな」
「まったくね。愛する妻の手綱くらい、しっかり握っておきなさい。あなたの奥さん浮気してたわよ」
「知っているさ。でも、その浮気相手ってフレデリカだろ。これからもニーサのこと頼む」
自分の妻の浮気相手に頭を下げるとか、どういう了見だろうか。この世界がどうかなっているか、私がおかしくなったかのいずれかだ。
「あなたがそんなでどうするのよ。ホークだってニーサちゃんのこと大切だから結婚したんでしょ?これじゃあ身を引いた私がバカみたい…………」
「身を引いた……?」
「な、なんでもないわよー!とにかく!ニーサちゃんのことを幸せにしてあげて」
「フレデリカさえよければ三人で暮らして……」
「ばっかじゃないの!私が幸せ夫婦の生活に水を差す様な邪魔者になると思うの⁉︎それくらいの空気は読めるわよ!」
いけない。つい怒鳴ってしまった。
ホークもニーサちゃんのことを想っての発言だったのに。
「大声出してごめん。とにかくホークはニーサちゃんのことだけを考えていればいいの」
「すまない。まさかフレデリカに説教されるとはな。わかったよ。ありがとう」