復興 その3
「私たち同業者みたいなものみたいだし。よろしくです」
タマヨリが勇者三人にペコリと頭を下げる。
「こちらこそ。オレはリーダーをつとめているスパークです。で、こっちがリンクとニーサです。よろしくお願いします」
へぇー。スパークもちゃんと挨拶できるようになったんだ。
年月は人を成長させるのね。
リンクとニーサちゃんも握手を交わしている。
そうかぁ。タマヨリも神様に選ばれて巫女としてショウナン国を守っているんだもんね。立場的にはあの三人と一緒よね。
「そうなんですね。タマヨリさんは悪魔から世界を守るために巫女になったんですね」
「うん。まぁ大した強さじゃなかったから被害は最小限で済んだし、悪魔自体も苦戦することなく倒したけどね。あなた達も悪魔から世界を守る為に選ばれたんでしょ?」
「そうですね。でもオレらが倒すべき相手はあの人でしたから」
何よ。なんでこっちを見るかなぁ。
スパークの言う『あの人』というのは私のことだ。スパークの視線が言っている。
「あっ、そうよね。あれは化物じみているからね。気の毒ね。仕方ないわよ。気にしない気にしない」
「わかってくれますか!あの化物ってキツいんですよ。僕なんて修行と称して何回殴られたことか!」
ほぅ……リンクめ。私のこと、そんな風に思っていたのか。
「ねぇリンクくーん。あなた一人称『僕』になったのね。昔のインテリ風よりは今の方が全然いいわよ。そうだぁ。久しぶりに剣の稽古見てあげるわよ。明日の朝お庭に集合ね」
「うわぁ!僕大丈夫ですよ!た、タマヨリさん!助けてください!」
いい成人男子が、年下の女子に助けを求めている。
「いいじゃないですか!私もまざりますよ!やりましょ。私は断然やる気になりましたよ!」
無駄よリンク。タマヨリは闘いを好むショウナン国の人間なんだから。
「残念だったわねリンク。タマヨリは巫女様だけど、同時に武闘家なのよ。諦めなさい」
全力で嘲笑してあげる。
「オレも!オレも参加します。タマヨリさんは武術の達人だとお伺いしています。ぜひ、お手合わせお願いします」
まっ、スパークはこうなるわよね。想定内。
「楽しくなってきたわね。じゃあ明日は力試し大会ね!楽しみ楽しみ♪やっぱり勝負するのはワクワクするよね」
タマヨリが楽しそうに飛び跳ねる。
「あっ!そうだ。勝負といえば。フレデリカぁ。あとで一緒にお風呂入りましょ。ほら、勝負する約束でしょ」
忘れていた……
わかってはいるの。
私が胸の大きさでタマヨリに勝てないことはわかっているのだ。この負けるのがわかっていて勝負するのは不毛すぎる。
まぁいいや。適当にキャッキャやってお茶を濁していこう。
「じゃあタマヨリ。勝負はともかく。夕飯食べたら一緒にお風呂入ろ」
「ちょっと待ってください。勝負って何のことですか?」
黄色の勇者が突然話に割って入ってきた。
ニーサちゃん?何かご機嫌ななめ?ちょった怒っている感じがするのは気のせいだろうか?
「ニーサちゃん?どうしたの突然。何か気になることでもあった?」
「いえ別に。ただ、何をするのか気になったもので。勝負ってなんのことですか?その勝負、私も入れて下さい」
やっぱり怒っている。仲間はずれにされたかのような言い方。
「ニーサちゃん。何か勘違いしているようだけど……」
その時。視界の片隅に、悪い顔をしたタマヨリが映った。
目つきがよくない。とんでもないことを企んでいる顔だ。
待って!嫌な予感しかしない。
この子は稀に、とんでもない悪さを思いつく。
「ニーサさん。勝負ってほどのことじゃないんです。ただ、フレデリカと仲良く……仲睦まじく身体の洗いっこしようって約束しているだけなんですよ。ねっ?フレデリカ」