復興 その2
いつの間にか日が落ちて視界が悪くなっていた。
こんなになるまで時間を忘れるなんて。相当に集中していたみたいだ。
「さすがに暗くて見えなくなってきたね。そろそろお開きだね。ねぇ?どうする?晩ご飯食べていく?」
師匠から本日の鍛錬終了の合図が下った。
相手の顔すら見えづらくなってきたのだ。剣筋なんて、なおさら見えないはずだ。
「ありがと。でも家でみんな待ってると思うんだ。今日は帰るよ。ねぇタマヨリ。よかったら今度さ。ウチにおいでよ。お夕飯ご馳走するからさ。今ならウチに勇者やってる手練れのシェフが居るんだ。期待してくれていいと思うよ。私もブンブン腕を奮っちゃうから」
若干筋肉痛の腕を、実際に振り回して見せる。
「それは楽しみだね。私のスケジュールは大丈夫だから、いつでも招待してくれていいよ」
カラカラと笑いながら話す様子から社交辞令ではなく、招待されたことを本気で喜んでくれている。
タマヨリが裏表ない性格であることは前々から知っている。付き合っていて楽しい女の子だ。
「そうしたらさぁ。明日とかでもいい?もちろん送迎付きで歓迎するよ」
ニーサちゃんとは気が合いそうだし、戻ってきた残り二人の勇者も武術の達人に手放しで喜びそうだ。
だから、スパークなんて
『手合わせお願いしまーす!』
とか言いながら、いきなり切りかかってきそうだ。
っていうか、私は初対面でそれをやられた。
自粛するよう、念のため釘を指しておこう。
今現在、我が家には居候が数人いる。
天使襲来によって家を失った勇者三人と黄色の勇者の旦那様であるホークだ。
幸いにも私の家には来客用の部屋が無駄に余っている。
せっかくなんで彼らには、その部屋を使ってもらうことにした。
「いいの⁉︎やったー!最近バタバタして、簡易的な食事しか取れなかったんだよねー」
「いやいや。あなた料理とかしないじゃない。『簡易的な』ものしか見たことないし。多分食事の栄養バランス悪いわよ」
「そうかな?それでも私、すくすくと育ってきたよ。ほら見て見て。オッパイとかフレデリカより成長してるし」
なんか、やぶ蛇った……
「そ、そうかなぁ。たいして変わらないと思うけどなぁ。胸の大きさに関しては。うん、タマヨリと同じくらいだよ。うんうん」
「じゃあさ。フレデリカのお家行ったら一緒にお風呂はいろうよ。比べっこしよーよ。勝負勝負」
くっ、この子……これで悪意ないわけ?
これじゃあウチの小さな聖騎士と一緒だわ。
「ぜ、全然いいわよ。まぁ胸の大きさなんて、たいした問題じゃないけどね」
明日の夜は賑やか……いや、騒々しい夜になりそうだ。
でも、絶対楽しい食事会になる。
彼女のことだから、絶対に素手での組み手が始まる。
なんせ、ウチには勇者が三人も居候しているのだ。
そんな私も、タマヨリと同じくらいワクワクしていた。