復興 その1
「おつかれフレデリカ。今日は終わりだけど、この後剣の練習する?」
タマヨリが差し出した水の入ったボトルを受け取る。
蓋を開けると、一気に身体の中に流し込む。
氷で冷やしてあったのか、キンキンに冷えていた。
重労働で疲れた身体に染み込む。
ここはショウナン国。
あの日。天使が襲来した日に破壊された町の再建が始まって一週間。私は毎日通ってお手伝いをしている。
破壊するのは容易いのに、新たなものを造るという作業には手間も時間もかかる。
この国の建造物を建てる技術はとても優れている。
さらには、その優れた技を持つ職人さんが多く存在した。
たった一週間で、ここまで町を修復出来たのは間違いなく彼らの功績だ。
私には、新しいものを生み出すことなんてできない。
私に出来るのは、せいぜい手伝いをすることくらいだ。
そして最近の日課は、この復興の手伝いが終わった後にタマヨリに剣の稽古をしてもらうことだ。
閃光さんの残してくれた刀を少しでも早く使いこなせるようになりたい。
この刀の優れている点。
それは、その重量と長い刀身を生かすこと。
さらには、閃光さんが鍛え上げた鋭い切れ味と魔界から採取した素材による『斬る』ということに特化した能力。
これにより『この刀を振るえば切れないものはない』とタマヨリに言わしめるほどの切れ味を誇る。
ただし、この刀を使いこなすには相当な筋力が必要になる。
普通の刀と比べものにならないほどの重量があるからだ。
この重量問題。私には問題なかったりする。筋力向上の魔法でドーピング出来るからだ。
「ねぇフレデリカ。そろそろこの子に名前付けてあげない?武器も名をもらった方が力を発揮できるんだよ。名前は魂みたいなものだからね」
そうだ。強力な武具の大半は名前を持っている。
タマヨリの言う通り、この子にも名前を付けてあげないと。
「そうだよね。でも私って武器とか作れないし、そういうセンスも自身ないんだよね」
あぁ……なんか昔、戦車に縁起が悪い名前を付けたことを思い出す。名付けはタマヨリに任せた方が無難だ。彼女なら、この刀に相応しい名を考えてくれる。
「何言ってるのフレデリカ。名前はこの子の魂に等しいって言ったでしょ。そう考えたら、必然的に決まってくるでしょ?って言うか、この名前以外ないと思うんだよね」
魂……魂かぁ…………あっ!
忘れていた。そうだ。この子の名前は……
「『閃光』」
二人の声が重なる。
そうだった。この刀は閃光さんの魂そのものだった。
「ごめんね。あなたの名前は『閃光』さんだったよね。あなたのこと完璧にちゃんと使えるようになるからね。よろしくね」
鞘から抜き天にかざす。
そこには閃光さんが居てくれて。そして私のことを守ってくれている感じがした。
「私ってば大切なこと忘れていたね。ありがとうタマヨリ。それじゃあ剣の稽古もお願い」
「いいけど、とりあえず一息つこう。休むことこそが上達への近道だよ。完璧なコンディションで修行に挑むことが効率よく強くなるコツだからね」
もう脅威となる敵は現れないと思うけれど、閃光さんが愛した『ショウナン国』の人たちを見ていて強くなる事へのこだわりが分かるようになった。
だから私も、この国の人たちに負けないように強くなろうと、私自身の心と最強の刀『閃光』に誓ったのだ。