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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
第五章 ゴッドブレス
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家族愛


「はぁ……はぁはぁ」


 両腕が肉離れで上がらなくなった。

 慣れない重くて長尺の刀を握る手のひらも豆が潰れ出血している。

 長時間にわたって慣れない刀を振い続けたことにより、体が壊れ始めてきた。

 

「痛たた。もう駄目だぁ」


 大地に大の字に倒れ込む。

 これ自力じゃ帰れないかも。

 

 精神的にドン底まで落ちそうだったから無理矢理身体を動かした。

 ドン底までは行かなかったけど、心の中がスカスカで何だか虚しい。

 天使は全て倒したのに、こんな結末だなんて。

 

 この異質なまでに長い刀。

 閃光さんは包丁一本にしても、全力で魂を込めて打っている。

 私には()()この長尺の刀を上手く扱えないけれど、この刀から閃光さんの意思を感じることはできた気がする。


「閃光さん……大丈夫だよ。私はもう負けないし挫けない。閃光さんの好きなショウナン国も守るから」


 握力を失った両手に力が入る。

 

「お迎えにあがりました。どうですか?少しは気持ち……落ち着きましたか」


 視界に入らない位置から声が聞こえてきた。知っている声だ。

 すごいな。この子は常に冷静だ。心の中は絶対に穏やかでいられないくらい乱れているだろうに。


「ありがと叡智さん。来てくれたんだ。一人じゃ帰れないなぁって、ちょうど困っていたの。助かったわ」


 声の聞こえて来た方に向かってお礼の言葉をとばす。


「フレデリカ様……閃光の為に泣いてくださり……ありがとうございます」


 まったく。無理しちゃって。見た目は子供なんだから、おもいっきり泣いたって恥ずかしくないのに。


「あたりまえだよ。大切な家族なんだから。叡智さんこそ。閃光さんのこと……そんなふうに大切に想ってあげてるじゃない」


 抱きしめてあげたいけど身体が動かない。こまった。


「フレドリカ様。回復します」


 頭の上の方から小さな手が視界に現れた。

 その小さな手に紫色のオーラが現れる。目に見えるほどの強力なエネルギーだ。

 そのまま、そっと私の額に触れる。

 瞬間、紫色に輝くエネルギーは私の全身に広がり包み込んだ。


「気持ちいい……」


 身体中の痛みが、ゆっくりと消えていく。

 それに、心の中も優しい何かで満たされていく。

 あたたかい……これは家族愛。

 仮初めじゃない。本当の家族に私たちはなっていた。

 枯れたと思われた涙が溢れてくる。

 完全に治癒された身体が勝手に動いていた。

 叡智の聖騎士の小さな体を力いっぱい抱きしめた。


「フレデリカ様は……ほんとうに泣き虫ですね……ほんとうに……」


「何よ。あなただって泣いているじゃない。こんな時くらい我慢しなくていいのよ。はい。胸かしてあげるから。いらっしゃい」


 この子がこんなに感情を表に出すのを初めて見る。

 

「あたしは……あたしは大丈夫です……そういうこと言うと心が挫けますから……うぅ……」


 たまには甘えればいいのに。


「叡智さん。怪我治してくれてありがと。今日くらい私に甘えなさい。ねっ」


 小さな身体をギュと抱きしめると、沈着冷静な聖騎士は堰を切ったように泣きじゃくった。



 


 

 

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