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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
第五章 ゴッドブレス
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番外編: 黄色の勇者の独白 その3


 彼らの気配には憶えがあった。

 私たちに勇者の力を与えた天使。

 なぜ彼らが人々を殺しているのか。



 背後から喉元に刃を突き付ける。

 この天使は大した強さじゃない。

 私一人でも対処できる。


「ねぇ!なんで世界を壊すの⁉︎あなた達は私たちの味方だと思っていたのに」


 見た目は人間の少女だ。

 こんな少女の姿をした彼女が街を破壊し、容赦なく命を奪っていく。

 見た目とは違い、強い力を持っていた。

 私に命を握られているにも関わらず、涼しい顔でスラスラと言葉を紡ぐ。この子に恐怖とかはないの?

 

「ねぇ?大丈夫?あなたのこと知ってるよ。邪悪なる存在『フレデリカ』を殺す為に神様から力を授かった人間でしょ?それなのに彼女と意気投合しちゃって。だから神様の怒りを買っちゃうのよ。あなたの罪も重いわよ。あなたと『フレデリカ』のせいで、この世界は滅ぶんだよ。とりあえずは、この刃を引きなさい。これ以上神様の怒りを買わないでよね」


 つまりはアレ。

 私が『あの人』を殺さなかったから攻撃を受けているということ……

 でも『あの人』が魔族になってしまったのは、この世界を救おうとしての事故みたいなもの。

 『あの人』は悪くない。

 ……私のせいだ。

 もしも、今の事態になる事がわかっていたとする。

 だからといって『あの人』を殺すことができたであろうか。 

 いや。絶対無理だ。『あの人』は、自分が世界から迫害を受

ける存在だと認識していたにも関わらず、この世界を守る為に戦い、そして勝ったのだ。

 『あの人』がいなければ、今の世界はなかったのだ。

 だから、『あの人』を抹殺しようとする者がいたとしたら、私は神であろうと刃を向ける。

 だから目の前にいるのが神の遣いである天使であったとしても斬ることを躊躇わない。



 

 世界が終わろうとしている。

 天使の襲撃で各国は現在進行形で窮地に陥っている。

 既に沈められた国もある。

 私の住むアクワ国も滅んでしまった。

 私も黙って見ていたわけじゃない。

 だけど、その天使の力は絶大すぎた。

 私の攻撃は命中するのに……

 鋼鉄の塊を殴っているように私の剣は弾かれる。

 私だけじゃ倒せない。




 これで四回目の撤退。

 アイツに挑む度に、この国の景色が削られていく。

 こんな時……『あの人』がいてくれたら。

 一緒に戦ってくれれば……

 

「!」

 

 私の魔力感知に反応するものがある。

 これは誰かが戦っている反応。

 あの天使と戦っている人がいる。

 この人と協力すれば天使を倒せるかもしれない。

 飛翔魔法を練って地面を蹴る。

 急げ!

 一秒でも早く!

 こんな幸運、もうないかもしれない。


 ゴォォォ


 反応の場所で、白色のエネルギーの帯が地面を削り取っていくのが見えた。


「あっ……」


 あぁ……街がなくなっている。間に合わなかった。

 その場所には瓦礫の大地が広がっていた。

 その瓦礫の世界に人が一人倒れているいるのが見える。


「助けないと!」


 気配をゼロにして降下する。


「なっ!」


 雷にうたれた様な衝撃が全身を走る。

 そんな……

 ずっと探し求めていたものがそこにある。

 土埃にまみれてしまっているが、はっきりとわかる。

 憧れていた美しい銀髪。

 最強の象徴だった青く透き通る刀身の剣。

 

「フレドリカさーん!」


 戦士としては失格だ。

 敵に居場所を知らせてしまった。

 緊急用の閃光弾を起動し、天使に向かって投げつける。


(3……2……1……)


 心の中でカウントダウンを始める。


「ゼロ!」


 目を閉じると同時に辺りを光が覆い尽くす。

 

「いまっ!」


 銀髪の戦士を抱え地面を蹴る。

 そのまま全速で離脱する。

 視界が涙で滲む。

 やっと会えた。

 闇に閉ざされつつある世界が輝いて見えた。

 私に一番必要なものを手に入れた。

 

 『希望』


 これは私の一番の武器になる。

 それよりも、この人は右腕に酷い傷を負っている。

 まずは治療だ。

 この人なら何とかしてくれる。

 根拠はないけど確信がある。

 

 血と土で汚れた銀髪に、そっと口づけをする。

 そして七年間。ずっと言いたかった言葉を口にする。


「おかえりなさい。フレデリカさん」

 

                        FIN

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