決着 その8
「おかえりなさいフレデリカさん!」
『ただいま』を言うよりも早く、ニーサちゃんが私の胸に飛び込んできた。
その反動で後ろに軽くよろける。
転倒だけは免れたけど、自分が思っているより疲労が溜まっているのに気付く。
「うん。ただいま。全部終わったよ。みんなは無事?もう帰ってきたのかな?」
「まだ戻ってないですよ。ホークも他のみんなも、各地の困っている人を助けています。叡智ちゃんは、薪になるものを探しに行ってくれてます。もうすぐ戻ってくると思いますよ」
ニーサちゃんがホークのことを名前で呼んでいる。
そうかぁ。一緒になれたんだね。よかったねニーサちゃん。
「そう……私も行かなきゃ。少しでも多くの人を助けないと……」
「駄目ですよフレデリカさん。今のフレデリカさん酷いですよ。疲れ切っていて今にも倒れそうです。鏡でも見てください……って、今ここに鏡なんでないですね。とにかく休んでください。ちなみに体力とか魔力に関しては心配していませんから」
今の私って、そんなに酷いかな?
心の中まで見透かされるくらいに弱っているかな?
そんな事ないと思うけど……
あれ?さっきまでニーサちゃんが私の胸の中に埋もれていたのに、いつの間にか逆になっている。
ニーサちゃんが私のことギュと抱きしめてくれている。
なんか安心する。
私の帰る場所がある事が実感できる。
「ありがとう……ほんの少しだけ休ませてもらうね」
黄色の勇者に導かれる様に、テントの中のベッドに横になる。身に付けていた装備は、ニーサちゃんが外してくれた。
こんなに身軽になったのは、いつぶりだろう。
身体中にまとわり付いていた錆みたいなものが剥がれ落ちていく感じがする。
いつでも、今すぐにでも夢の中へ落ちることが出来そうだ。
そうか。もう終わったから少しだけなら休んでもいいんだ。
目が覚める頃には、みんな帰ってきているかもしれない。
そうしたら、昔みたいに揃って食事をとろう。
「もう……だめかも。ごめん……少しだけ休ませてもらうね……」