決着 その3
「クソ魔王め……よくも私を落としたな。こんな薄汚れた……下卑た生物しかいないところに!」
今までの丁寧な口調が、面影もないほどなくなってしまった。
これが、この天使の本来の姿なのかもしれない。
まぁ今までのこちらを見下した様な口調は、生理的に気持ち悪かった。こちらの神経に入り込み、嫌悪を撒き散らす。だからこの乱暴な言葉づかいの方が好感が持てる。
「ねぇ?あなたは、この魔界で斬られたとしても天界に還れるのかしら。できたら殺したくないの。それだけが心配なのだけど」
私も、天界のルールやシステムはわからない。
今までの天使は、人間界で消滅させられても還れると言っていた。だから躊躇なく斬ることができたのだ。
ここ魔界ではどうなるのだろうか。
できたら確実に天界に還せる様に、人間界に連れ帰ってから光にしてあげたいけど、むこうじゃ勝てないからなぁ私。
「知らん!こんな世界で消滅した天使など聞いたことがない。くそ!腕が再生しない。くそがぁ!」
どんどん天使の言葉が乱暴になっていく。
ここまで乱れてくると、せっかく持てた好感が消え去りそうになる。
「ごめん。あまり時間がないから、もう終わらせてしまうけど、恨むなら神様を恨んで。あなたが天界で再生されることを祈ってる……ってあれ?敵対してる神様に祈るって……なんか変な感じ」
「ふざけるな!このオレが貴様なんぞに……うわああああ!」
蒼の剣が天使の体を二つに斬り分けた。
切り口から溢れる様にキラキラとに光が溢れ出し、次第に、全てが光の粒子となって消えた。
消滅の仕方が他の天使と一緒だ。
ちゃんと天界に戻れたのではないか。そう信じたい。
少しだけ、空の高いところへと昇る。
下は砂だらけの砂漠だけど、ずっと遠くに目を向けると海らしきものが見える。
ちゃんと空もあるし、ここは人間界とほぼ変わらない。
徹底的に弱肉強食な世界だけど生物はちゃんと生きている。
まだ細かいところまでは探索はできていないけれど、言葉をあやつる知性のある種族も確認できた。
こっちの世界なら、こんな私でも受け入れてくれるのだろうか。
おっと。今はこんな感傷にひたっている場合じゃなかった。やらなければいけない事はまだ山ほどある。
「さぁ蒼の剣。私たちの世界に帰ろう。もう少しだけ一緒にがんばろう!」
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