天使と魔王と黄色の勇者 その6
「痛たた……あう……右腕やばい。また動かなくなった。そんなことよりもニーサちゃんは……」
このタマヨリ奥義。タイミングの練習はしていたけど、『反発』の威力を上げて撃ったのは初めてだ。
この反動は対策しないと、衝撃でこちらまで吹き飛ばされる。
十メートル離れたところの地面がえぐれている。
あそこが奥義発動の場所。
まぁまぁな威力で吹き飛ばされた。
「ニーサちゃん!」
私のいる場所から、さらに数メートル離れたところに黄色の勇者が倒れていた。
「ニーサちゃんゴメン!こんなに反動来るなんて想像していなかった。これ飲んで!」
無限空間から回復薬を三種類取り出す。
体力回復、魔力回復、完治癒の三種類だ。
「フレデリカさん……痛いです……予想外の爆発で……受け身もとれなかったですよ。えっ?これポーションですか?あっ、はい。このまま飲めばいいんですよね………………す、すごいです!今やっちゃったダメージだけじゃなくて、他のキズまで一瞬で治っちゃいました!これ完全治癒薬ですか⁉︎」
「うん。完全治癒薬とは違くて、体力とかは回復しないんだ。で、この二本が体力と魔力の回復薬。三種類とも譲ってもらったやつなんだけど。よかったら使って」
赤と青の液体が入った小瓶を渡す。
ちなみに完全治癒薬は伝説級のアイテムで実際に見た者はいないとまで言われている。
「ところで、あの天使って……どこ行っちゃったんですか?私、天使の攻撃ガードしようと注意してましたけど、なんか直前で消えちゃって。そうしたら爆発が起きて巻き込まれちゃって。正直、現在の状況がわかってないというか」
「あっ、天使ね。あいつは魔界に送っちゃったんだ。さっきまで、あっちの方に黒いモヤモヤがあったでしょ?あれが魔界へ繋がっている出入り口で。そこに吹き飛ばして魔界に送ってあげたの。向こうなら私の力も有利に上昇するし、逆にあいつは属性的に不利な状況になって力を発揮出来なくなるんだよね。と、いうわけで私、あいつ倒してくるね。一時間くらいで戻るから待っていて」
完治薬を飲み、先程のダメージを治す。
とりあえず右腕を最低限動かせる状態になった。
相変わらず、天使にやられたダメージは治らない。
「フレデリカさん!」
ニーサちゃんの顔がひきつっている。
私の袖を握っている手が震えていた。
……あっ、そうか。私のことだからまた……
「大丈夫だよ。ちゃんと戻ってくる。もう黙っていなくならないよ。だから心配しないで。約束する」
少しでも安心させてあげたくて、華奢な体を優しく抱きしめる。ニーサちゃんも抱きしめ返してくれた。
こういうのって安心する。ニーサちゃんも安心してくれたかな?
震えがおさまったのを確認し、抱きしめていた腕をゆっくりと解く。
「じゃあ行ってくるね」
蒼の剣で目の前の空間を切り裂き魔界へのゲートを開く。
天使との決着をつける為、私は闇の中へと飛び込んだ。