天使と魔王と黄色の勇者 その2
「さて。これで貴女方は二人。少しは楽しませてくれるのでしょうか。私は引き続きハンデとして片手で相手をして差し上げます。そちらの方が有利なのですから、くれぐれも『逃げる』という選択はしないで下さいよ」
この天使。優しいフリして確実に、今ここで私たちを葬るつもりだ。
「ニーサちゃん……私の考えている作戦っていうのは……」
今、目の前に立っている黄色の勇者は、私の知っている以前のニーサちゃんとは全然違う。
身長が伸び、幼かった体つきが発達している。こんなに細身で華奢な外観なのに、しっかりとした体幹バランス。以前は使っていなかった二刀流スタイル。装備で見えないけど、全身の筋力が鍛え上げられているに違いない。
だから、どんなに無茶な作戦だろうが、彼女ならやり遂げてくれる。
「わかりました。私はかき回して隙をつくればいいんですね」
「ごめん。今の私じゃ足手まといにしかならないから。危ない役割を頼んでごめん」
「大丈夫です。フレデリカさんには裏切られてばかりですが、戦闘に関しては信用していますから」
「耳が痛いわね。もう黙っていなくなったりしないから大丈夫だよ」
「そんな事言っても、まだ信用できませんよ。この戦いが終わったら一旦魔法で拘束しますから。抵抗しないでくださいね。ふふっ」
久しぶりに、ニーサちゃんの笑顔を見た気がする。
ああ……なんか涙が溢れてくる。
だめだ。我慢しなくちゃ。
「どうですかお二人さん。何か作戦を立てたみたいですが勝てそうですか?でも、この国を守れなかった時点で、貴女方の負けなのでしょうけど」
アクワ国で出会った人達の姿が浮かんでくる。
みんな無事に逃げてくれてればいいけど。
よくも……絶対に許さない。
「フレデリカさん。それじゃあ行きますね。あとの事はお願いします。絶対に勝ちましょう!」
よかった。ニーサちゃんも私と同じ事を考えていた。
「うん!絶対勝って帰ろうね!」
笑顔で返す。
私も久しぶりに笑った気がする。
心のモヤモヤが、ほんの少しだけ晴れた気がした。
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