天使と魔王と黄色の勇者 その1
二本の剣を構える勇者。
そのうちの一振りは見覚えのある剣だ。
昔、勇者三人に贈った三種の内の一本。
彼女が選んだ雷属性の剣。
自然と、あの頃の記憶が甦る。
「フレデリカさん!今は泣いている場合じゃありません。現状を切り抜けたらにしてください。それと帰ったらお説教ですからね」
「ごめん……私……」
ニーサちゃん怒っている。
助けてもらったのに、自分勝手な行動をとってしまった。
怒って当然だ。
「また会えましたね。昨日はよくも魔王を逃してくれましたね。貴女、神が力を与えし力を持つ者ですよね?わかりますよ。神の意思を背負っている貴女が我々天使と敵対するなんて。理解に苦しみます」
前回の戦闘で私を逃がしてくれたのは、やっぱりニーサちゃんだった。
やっぱり私は、一人じゃ世界を救う事なんて出来なかった。
「フレデリカさん。いつまで地面に膝ついているんですか。一人で無茶しているってことは、何か作戦とかあるんですよね?正直な話、わたしは何の考えもなく飛び込んで来ちゃったからフレデリカさんの作戦が必要です。せめて、あの二人がいてくれたら何とかなったかもしれないのですが……」
あの二人って……スパークとリンク?
「ねぇニーサちゃん。スパークとリンクは今何処にいるの?まさか、やられちゃったわけじゃないんでしょ?」
「あの二人は他の国の救助に行ってます。私もこの国を守るつもりでしたが……ごめんなさい。私一人じゃ天使を食い止められなかった……フレデリカさんの故郷守れなかった。本当にごめんなさい」
私の故郷?守れなかったって……
「もしかして……ここって……アクワ国⁉︎」
ニーサちゃんは何も言わなかったけど、悲痛な表情が私の言葉を肯定していた。
あらためて周囲を観察する。
この瓦礫と化した街がアクワなのだろうか。
「いま……私たちがいる場所は……王都だったところです」
あまりにも高域に大規模に破壊されてしまっている。足下にある瓦礫が、元々なんだったのかすら判別できない。
「ニーサちゃんのせいじゃないよ。悪いのは天使や神だよ。あと……私も」
「フレデリカさん!フレデリカさんは悪くないです!むしろ被害者じゃないですか!フレデリカさんが悪者だったら、私たち三人の勇者も悪者です。だから誰の責任でもないんです」
黄色の勇者の悲痛な叫びが辺りに響く。