叡智の聖騎士
驚いた私は、地面に倒れる様にしゃがみこむ。我ながら情けない……
「あっ、驚かせてゴメンね。そんなつもりはなかったんだけどさぁ」
女の子が真上から見下ろしている。私より全然年下の女の子だ。見た目では十二、三歳くらいだろうか。小さいながらも体のサイズにあった甲冑を身につけていた。なんか、小さい子のお遊戯会の劇に出てきそうだ。
「ねぇ!おねぇさん!今、あたしの事、子どもみたいに思ったでしょ?あたしはもう十三歳だから」
えっ?考えていた事を読まれた?まさか。
っていうか十三って、やっぱり子どもじゃない。
「子どもって言うな!あのねぇ。精神的にはあんたより大人よ。あんた育ち盛りを済ましている割には体型も未発達よね。見た目だけで大人ぶらないでよね。」
やっぱり心の中読まれてる。
ホークに伝えなきゃ。この子は危険だわ。
「……って。ホーク!何笑ってるのよ!あんた敵の発言で和んでるんじゃないわよ」
「もう話進めていいでしょうか?」
大きい方の甲冑が茶番を終結させようとしている。
「それで……どうでしょうか?私の考察通りでしたか?」
大きな甲冑が小さな方の横に並ぶ。
「そうね。驚くほど推理通りよ。彼の頭の中読んだから間違いないわね」
「今日はとても大きな収穫があったわね。よくできました。いい子いい子」
自称『大人』十三歳女子の頭をナデナデしている。
「だから子供扱いするな!」
「はいはい。それはそうと。ホークさん?でしたっけ?その『蒼の刃』を扱えるという事は……自覚していますよね?理解して『それ』を使っているという事でよろしいでしょうか?」
「まいった……本当に人の記憶を読み取れるみたいだな。あと『こいつ』の名前、蒼の刃っていうのか」
「それでですね。あなたの秘密が私達にバレてしまったというわけなんですが。どうでしょう?私達の国に来る気はありませんか?あっ。でも、その前に自己紹介しておきますね。私達の役割というのを理解した上で、お返事してくださって結構ですよ」
空中にいた二人がゆっくりと下りてきて地面に足をつく。
「まず、この子なんですが……」
「ちょっと!あたしの保護者じゃないんだから!名乗りくらい自分でやるよ」
小さな少女が文句を口にしながら一歩前に出てきた。
「あたしは『叡智の騎士』だ。力仕事は他の二人に任せて、あたしは頭脳担当。さっきみたいに人の記憶を読んだり、瞬間移動したりと有能なんだけど、一番の力は神から授かった知識。あたしにはこの世の事が何でもわかる。三騎士の中で一番役に立つ騎士なんだよ。すごいだろぉ」
無邪気な事に、すごい得意気に話す。まぁ、確かに凄そうだけど。
「よくできました……と言いたいけれど、いきなりその説明じゃわからないですよ。ほら、あの人達、キョトンとしていますよ。ごめんなさい、お二人さん。まだ上手に説明ができないんですよ、この子。では最初から説明いたしますね」
無邪気に怒っている叡智の騎士を後ろに追いやり、彼女は自分たちの役割と力、そして目的を話し始めた。