天使 その7
「えっ?何?どうしたの。あなた誰⁉︎」
突然起こった初対面の抱擁に戸惑う。
ほぼ号泣しているこの人……
あれ?でも、この感じ……この泣き声……
覚えがある。
「ねぇ。もしかして……ニーサちゃん?」
あれから七年経っている。
単純に計算すると彼女の年齢は二十五歳ということになる。
もう二度と会えないかと思っていた。
まさか、こんな形で再会するなんて。
パァン!
頬に痛みが走る。
頬を叩かれた理由はわかる。
私は彼女たちと酷い別れ方をした。
「フレデリカさぁん!心配したんですよぉ!なんで自分勝手にどっか行っちゃうんですか!どうして……どうして。ううっ……わぁぁぁん!」
「綺麗になったねニーサちゃん。私なんかの為に泣かないで」
そっと髪を撫でる。
大人になった彼女に、こんな事するのは失礼かと思ったけど、何故かこうしてあげたいと思った。
「フレデリカさぁん!フレデリカさぁん!ずっと探していたのに……うぅ……全然見つからなくて……」
なんか昔と変わらないな。
昔みたいに、この子たちと楽しく暮らしたい。
もう、無理なんだけど。
「ニーサちゃんは大人になっても可愛いね。心配してくれてありがとう。すっごい嬉しいよ。少しだけど、ニーサちゃんと会えて嬉しかった。私もう行くね。やらなきゃいけないことがあるんだ」
瞬間移動をする為に三歩分距離をとる。
彼女の顔が引き攣る。
「なんでですか⁉︎どうして一方的にいなくなろうとするんですか⁉︎残された方の気持ちも考えてください!」
初めて見るニーサちゃんの顔だ。この子も、ちゃんと成長しているんだ。
「それに、その腕。回復魔法じゃ完全に治らなかった。そんな状態で何する気ですか?どうして天使にこだわるんですか?眠っている時も譫言の様に言っていたし。私だって、この最悪な状況は理解しています。一緒に戦いましょうよ」
一緒になんて……
こうなったのは私のせいなんだよ。だから、私がやらないといけないんだ。
「どうして何も言ってくれないんですか?私のこと嫌いになったんですか?」
違うんだよニーサちゃん。
「……ごめん。さよなら」
魔力フィールドを展開。天使の位置を索敵。
見つけた。
あの一番目の天使。
今の私じゃ、まともにやっても勝てない。
それならば……
「フレデリカさん!待って!話したい事たくさんあるの!報告したい事も。だから行かないで!」
痛い……痛いよ。
胸に何か詰まっている様に重く苦しい。
ごめんニーサちゃん。
私だって話したい事いっぱいあるんだよ。
「お願いします!行かないでください!」
「本当にごめん……ありがとう。ニーサちゃん……大好きだよ」
景色が変わる。
同時に、大切な友人の叫び声も聞こえなくなった。