天使 その3
「よくも……よくも四十七天使を!彼は正しいのに!彼は間違った事などしていないのに!」
天使は番号で呼ばれている。
小さな数字で呼ばれる天使ほど力が強いらしい。
その話からすると、目の前にいる少女の天使は大きめの数字だろう。
彼女の話からすると、先程斬ったのは四十七番目に強い天使という事になる。
「ねぇ。もう一度言うよ。これ以上何も壊さずに、この世界から去ってくれるなら見逃すから。私も乱暴な事はしたくないの。だからお願い。これ以上人間を傷付けるのはやめて」
何度この言葉を発してきただろう。
そして、その言葉が受け入れてもらえない事もわかっている。
そうやって、これまで三十ニの天使を斬り捨ててきた。
「無理です。神の意思に逆らう事などできません。わたしだって……わたしだって、こんな事が世界の為になるなんて思えません。でも!」
天使から放たれた光が障壁にあたり目の前で四散する。
「悪である私を消滅させなくてはいけない天使たちの立場もわかる。だから私の命を差し出す事には何の迷いもないの。でも関係のない人を傷付ける事は絶対に許せない。だから私はあなた達を天に還さないといけない。だからごめんね」
蒼の剣で天使の胴を薙ぎ払う。
二つに分かれた天使の体は地面に向かい落ちていき、そして光となった。
「時間がない……次行かないと」
こうしている間にも世界は攻撃されている。
休んでいる時間はない。
あと四十五の天使を倒さなくてはならないのだ。
「おい、お前!」
下から声が聞こえる。
彼は、この地方を守る、『神のしもべ』だ。
ショウナン国で言うタマヨリみたいなもの。
タマヨリの様に強力な力を持っている。
天使侵攻から一日が経過しても、この国が滅んでいないのは彼のおかげだ。
「ごめんなさい。時間がないの。もう行かないと。あなたは、この国の人を助けてあげて」
「だから待てよ。体力回復してやる。五分もかからないから。早く降りてきな。そんな戦い方してたら世界救う前に力尽きてしまうぞ」