天使 その2
天使の右手がフラッシュした瞬間、私の周囲でスパークが起こる。
すでに防御の障壁は張ってある。
バチ……バチ……バチバチ
天使の右手から断続的に放たれているエネルギーの波が障壁を削っていく。
バシュ!
障壁を抜けた光が、私の左足をかすめていった。
きっちりガードするつもりで張った障壁を容易く抜けてきた。天使が悪魔に対して有利というのは本当のようだ。
「ほら!もっと気合い入れてバリアー張らんと終わっちまうぞ!」
嘲笑うかの様に少しずつ威力を上げてくる。
このまま、いたぶりながら私の命を削っていくつもりだろうか。でも、そんのものに付き合うつもりはない。
右手に蒼の剣を握り、上段に振りかぶる。
魔力を解放。
刀身に魔力が宿り、美しいサファイアの姿をした剣は、妖艶なアメシスト色の剣へと容姿を変える。
そのまま斜めに振り下ろす。
ザシュ!
天使の右腕が根本から地上へと重力に引っ張られ落ちていく。
持ち主から離れた腕は、地面に到達する前に光の粒子となって消えた。
「き、貴様ぁ何をしたぁ!この俺のぉ!許さんぞ……絶対にゆるさなぁい!」
「許さないのはこちらの台詞。あなたの腕がなくなったのは私より弱いからよ。あなた達の前で私の力は弱くなるみたいだけど、弱くなった以上の力を注ぎ足せばいいだけの事。腕の一本や二本落とすなんて容易いこと。ほら!」
ザシュ!
「ぐわぁぁ!くそっ!俺の両腕がぁ!お前ごときの悪魔に俺が斬られるなんて事はありえなぁい!俺の方が圧倒的に有利なんだぞー!」
「もういいから……あなた達は死なないのでしょ?いいじゃない。もう二度とこちらの世界には来ないで。さよなら」
「ま、待てよ。ここの世界には七十八の天使が来ているんだ。さすがのお前でも全ての天使を相手にするには無理だろう?
俺が口を利いてやるやるよ。だから…………」
ザァン!
天使の体が真っ二つになって落ちていく。
こんな奴に時間をかけていられない。
残り七十七の天使を殺しに行かないといけなくなった。
くそっ……また私の存在が邪魔を……みんなの障害となっている。やっぱり生きていちゃいけなかったんだ。
この命を今すぐにでも絶ちたい……
いや、死ぬのはこの世界に来ている天使を全て消してからだ。一日でも。一秒でも早く片付けなくちゃ。遅れれば遅れるほど犠牲が増えていく。猶予なんてものはあるはずもない。
「ごめんね……みんな。もう迷惑かけたくないから私は一人で行くね。この世界は命にかけても絶対に守るから……さようなら。今まで楽しかった。ありがと」