はじまり その3
隣の大通りから黒い煙が上がっているのが見えた。
タマヨリはどこ?
きっと、あの煙の下だ。私も行かなきゃ。
建物の壁を蹴り、屋根の上へと飛び乗る。
そのまま屋根伝いに走り出す。
「な、何あれ?」
遠くの空に、巨大な青白く輝く玉が浮かんでいる。
これと似ているものをどこかで見た事がある。
そうだ。タマヨリと闘って時に彼女が作り出したエネルギーの玉に似ている。
その球体がゆっくりと動き始めた。
重力に導かれる様に、地に向かいゆっくりと落ちていく。
あの玉が私の考えている通り、エネルギーの塊であるなら大変な事になる。
「嘘でしょ?マズイよ。誰か……誰かアレを何とかしてっ!」
私じゃ間に合わない。
ドォォン!
再び大地が揺れる。
「きゃあ!」
大きな揺れが起こり、屋根から落ちそうになるが何とか踏み止まる。
「ちょっと。冗談でしょ!」
何が起きているかはわからないけど急がなくちゃ。
とりあえずタマヨリと合流しよう。
屋根から飛び降り、両手両足で地面に着地する。
何が起きているか、一刻も早く確認しなくちゃ。
体を起こし顔を上げた。
「えっ?そんな……」
大通り周辺の広範囲に渡り地面が抉れていた。
その抉れた地面に、建造物であっただろう残骸が大量に積もっている。
残骸の一部から煙が出ていた。
何かの火が引火したのだろう。
この燃えている残骸も放置したら、さらに燃え広がってしまう。
一刻も早く消火しないといけない。
しかし、それと同時に人命救助もしなくてはいけない状況だ。大勢の人が動けないでいる。怪我をしている人。残骸に埋もれている人。
そこら中から人の叫び声や泣き声が聞こえる。
どうしよう。人手が足りない。
「フレデリカー!力を貸してー!」
自分を呼ぶ声がする。
声のした方を見る。
タマヨリだ。
血を流している女性が横たわっている。
タマヨリは、その女性の治癒を行なっているみたいだ。
「タマヨリ!何が起こってるの?さっき他の場所でも同じ爆発が」
「わからない。誰かが、この町を攻撃しているのは確かだけど。でも邪悪な気配は感じないの。むしろ、私に近いオーラを感じる。何が起きているか見当もつかない。でも一つ言える事は、そいつを止めなきゃ。こんな事をする奴は絶対に許せない!」
こんなに怒りをおもてに出しているタマヨリは初めて見る。
それと同時に、目の前の命を救う事に全力を尽くしていた。
いくつもの命を救おうとしているのはタマヨリだけではない。
まわりを見ると、たくさんの人々が救助活動を始めていた。
その数は時間が経過すると共にどんどんと増えていく。
町の人達は戦闘の為に身に付けた力を、人の命を救う為に発揮していた。
瓦礫を砕き、埋もれた人を救出する。
治癒能力がある者は、傷ついた人の命を窮地から救い出す。
私も……私も何かしなくちゃ。
「フレデリカお願い!こんな酷い事をする奴を止めて!私はこの場を離れられない。こんな巨大な力を止められるのはフレデリカだけだから。だからお願い!みんなを助けて!」
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