近接戦闘 その3
ここは何処だろう。
呼吸がうまくできない。
暴風域だろうか。風が強い。
強風で目を開けない。なんとかうす目を開ける。
真っ青だ。青の世界。
えっ?ここって……
「そ、そら?」
下の方に雲が広がっている。
もしかして遥か上空に吹き飛ばされた?
上昇の勢いが全然弱まらない。
このままだとどうなっちゃうの?
なんとなくマズイ気がする。
もどらなくちゃ。
魔力を放出し、姿勢を制御する。
「このまま降りればタマヨリのところに戻れるよね」
風に流されないように注意しながら降下を開始する。
それにしても私は何をされたのだろうか。
おぼえているのは、魔法で加速した直後までだ。
予定通り超加速でタマヨリの懐に潜り込んだ。
原因はわからないけどスピードを制御出来なくなって、体ごとタマヨリに体当たりする形になった。
そこで記憶が途切れている。
おそらく、このタイミングで弾かれて上空に吹き飛ばされた。
っていうか、やり過ぎだ!
たまたま覚醒したからいいけど。気絶したままだったらどうするの?普通に死ねるよコレ。
加減ってものを知らないのかしら。
雲を抜けると町が見えてきた。
タマヨリは何処だ……
意識を集中し、タマヨリの気配を探す。
あーもう。人が多くて探しづらい。
この町には何度も来てるはずなのに、こんなに上空だと逆に地理がわからなくなる。
「あっ!見つけた!」
一気に降下する。
「タマヨリー!殺す気かぁー!」
上空二十メートルからの必殺蹴りで太陽の巫女を狙い撃つ。
ドガァ!
必殺キックは地面をえぐり、膨大な土埃を周囲に巻きおこす。
「無事だったフレデリカ⁉︎ホントごめん!怪我もなくてよかったよー」
「まぁまぁきわどかったわよ!それに申し訳ないと思うなら、蹴りの一発くらいは受けなさいよ」
服についた土を払うが、なかなかおちない。
そうか。雲を抜けてきた時に服が湿ってしまった。そこに土埃をかぶったからか。
「それとこれとは別よー。でもまさか、あんなに派手に飛んでくなんてねぇ。フレデリカの力が強いからだよ。あの技は相手の力を利用する技だから」
「私の力?私だって相手の力を利用して投げ飛ばしたり、カウンターで打撃を打ち込んだりする技術は知ってるよ。でも私、そんなに本気で殴りに行ってないし、能力向上の魔法も敏捷しか使ってないよ」
思い返すが、そんなに特別な事はしていない。
「それよ。その敏捷性。あの技で利用するのは相手のスピードだけ。フレデリカあなた、スピード上げまくった上に、最後にダメ押しで加速させたわよね?その加速が想定外だったよ」
「よくわからないけど、ちょっと死にかけたんだから、ちゃんと伝授しなさいよその技」