近接戦闘 その2
「じゃあ再開するよ。今日は、私のとっておきを教えてあげるよ」
得意げな満面の笑顔で人差し指をこちらに向ける。
この子。初対峙した時の巫女ならではの厳かな雰囲気が全く感じられない。
いま目の前にいるのは、ただの好戦格闘マニア女子だ。
格闘を続けていると、いずれ私もこうなるのだろうか。
いやいや。私は戦いとかは好まない、聖なる平和女子なのだ。
……違うか。神様に嫌われているから『聖なる』は間違いかもしれない……
とにかく争いが嫌いな平和主義者なのだ。
それはともかく、戦いのバリエーションは多いにこしたことはない。
せっかくのお誘い。ここはお言葉に甘えて『とっておき』とやらを盗ませてもらうよ。
「タマヨリのとっておきってことは相当スゴいんだよね?」
「まぁね!私オリジナルだからね。普通の人には難しいけど、フレデリカなら出来るよ。説明するより実際に見てもらった方が分かると思うから、とりあえず私に全力で殴りに来てよ。今回は特別に能力上昇の魔法くらいなら使っていいよ」
なるほど。実際に体感してみろということだろう。
タマヨリの口元の、いたずらっ子の様な笑みからすると相当自信あるのだろうか。
「よおし!いくよー!」
能力向上の魔法を使っていいなんて、さすがに油断しすぎじゃないのかなぁ。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。はぁぁぁ……」
敏捷性を大幅にアップ。
ガードされる前に一撃を当ててやる。
「準備はいいみたいね。さぁフレデリカ。渾身の一撃を撃っておいで」
「言われなくたって。行くよ!」
足元に反動の魔法を設置。これで初速度からマックススピードだ。
「これで準備は万全……スタート!」
ドォン!
地面を蹴る。
反動魔法でロケットスタート成功だ。
まわりからは消えた様に見えることだろう。
ふふふっ。私の作戦はこれだけじゃない。
私はもう一段階ギアが上がる。
タマヨリに到達する直前に加速魔法で更に加速する。
完璧だ。私ってなかなかの策士ではないだろうか。
あとで叡智さんに自慢してやろう。
よし!あと三歩の距離でタマヨリに届く。
ここだ!
「加速!」
準備していた魔法を発動させる。
これでいただきだ……
「うわわわぁ!」
ち、ちょっと何これ!加速が……半端ない加速が!こんなの速すぎるよ!
私こんなに速くするつもりなんて……
「うわわぶつかる!タマヨリ避けて……えっ?」
タマヨリの顔から不敵な笑みが消えていない。
ドォォォォォン‼︎
な、何?この衝撃……って!
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」