近接戦闘 その1
あの激闘のあと。タマヨリとは友達と呼べるくらいにまで仲良くなった。
お互い、特別な立場という事もあって話も合ったし、それぞれの想いに共感する事もできた。
それから週に何度かショウナン国に通うようになった。
ショウナン国の人たちは日常的に戦闘訓練や組み手をする習慣があるみたいで私も混ぜてもらった。
ダイエット感覚の軽い気持ちで参加したのだけど、
『近接戦がダメすぎて見ていられないよ。またどこかで、私みたいなのと戦闘になったらやられちゃうよ。私が鍛えてあげる。まかせてよ』
タマヨリに盛大なダメ出しをもらってしまう事に。
というわけで、彼女の誘いで近接戦闘を教えてもらう事なった。
だいたい週三回くらいで夕方の三時間くらい鍛えてもらっている。
「フレデリカ今の突きは良かったよ。予測が難しい軌道からの攻撃だったし、速度もなかなかだったよ」
近接戦闘のスペシャリストからお褒めの言葉をいただいた。
「ほんと⁉︎結構工夫したんだ。でも、結局当たらないとダメだよね。まだまだだね」
こんな感じで、タマヨリには一度も触れられていない。
「そんな事ないよ。最初に会った時よりかなり良くなったと思うよ。私やフレデリカみたいにパワーが不足しているタイプは、いかに急所に一撃を撃ち込めるかだからね。その一撃を入れる為のプロセスが大事だと思うよ」
タマヨリとの修行に通い始めて一カ月しか経っていないけど、新しい戦闘技術を身に付けることができたし、いろいろな発見がある。
考えてみると、今まで剣術だけで、近接の戦闘訓練は全くといっていいほどやってこなかった。
まぁ、戦闘行為は避けるべき行為として生活してきたから、戦闘訓練自体を重要視してこなかったのだけど。
今思えばだけど、魔竜とか殺し屋の相手もしなきゃいけなかったし、タマヨリとの闘いも下手をすれば人生終わっていたかもしれない。
うわぁ。ちょっと前まで『最強』とか言っていた自分が恥ずかしい。完全に『井の中の蛙』だ。
思い出しただけで悶えてしまいそうだ。
「ちょっとフレデリカ!何悶えてるのよ。もっと集中しなさいよ」
「えっ?ご、ごめん!私なんか考え事しちゃってた」
どうやらリアルに悶えていたようだ。
「私はね。フレデリカに死んでほしくないから言っているんだからね。私みたいな神の代理人みたいなのは各地方に一人はいるみたいだから。あなたの事情を知らない人は本気で殺しにくるわよ」
「わかっています。全部私の自惚れが原因です。今日から心を入れ替える事を太陽の巫女に誓います……」
私は一生、この業を背負わなくてはいけなくなってしまった。恥ずかしい……
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