タマヨリ その5
「もう一発たりとも逃さないんだから。向こうが千発の弾なら、こっちは倍の二千発だ!」
倍の二千は多いかもしれないけど、甘く見積もると先程みたい事態になりかねない。もう激痛に耐えるのは嫌だ。
「ねぇ。ちょっとだけ時間欲しいの。三十秒くらいでいいから。蒼の剣。時間かせいでくれないかな?」
私の問いに応えるかのように、美しい青い剣は手を離れる。
「私の魔力持っていって」
ガードの部分に、そっと口づけをする。
この一瞬で出来る限りの魔力を送った。
美しい透明な青色が紫色のオーラに包まれる。
「時間がないから少ししかチャージ出来ないけど。無事に戻ってきてね。お願い蒼の剣」
私の願いを聞くと同時に、紫色の尾を引き光の中へと姿を消す。それと同時に複数の爆発が起こる。
「ありがと。今のうちに……」
意識を魔力のフィールド内に集中させる。
約二十五メートル先にある大きな反応が巫女本体だ。
その周辺の沢山の反応がエネルギー弾だ。
すごい勢いで消滅しているのは蒼の剣が片っ端から潰してくれているからだ。
だけど、それ以上のペースで反応が増えていく。
さすが神様直属の巫女さまね。だけど……
目には目を。
「我が身に宿し魔力……幾億の刃となりて彼の者を滅ぼしたまえ。道は我が示す……」
両手を上空にかざす。
「はぁぁぁぁ!」
空に向かって、全力で魔力弾を撃ち出す。
深い紫色の弾は空を覆い尽くしていく。
太陽の光を遮断するほどの数が周辺を滞空している。
「まだまだ!」
光なんて全てを飲み込んでやる。
私は魔女。
この半径二十五メートルの魔力フィールドを全て私で満たしてやる。
「はぁぁぁ!だぁぁ!」
光は閉ざされた。
この領域は完全に掌握した。
ネズミ一匹たりとも逃さない。
「蒼の剣。戻っておいで」
心の中で話しかける。
勝利の道を作ってくれたパートナーは、私の右手へ帰ってくる。
「ほんとうにありがと。あとは任せて。大丈夫だよ。私は負けないから。それにしても……これじゃあ本格的に魔王ね私」
私が従えし魔力弾は五千発。
神の巫女が何をしようと無駄だ。
「さぁみんな!凶弾となり、我に害を成すものを排除せよ……って。この魔法ってオリジナルだから名前付けてなかった。何か名前付けた方がいいよね。そうね……よし決めた!」
何事もそうだが、名前がないものは強くなれない。特に魔法は明確な名があった方が段違いに威力が違う。
「いくよ!魔王憤怒!」